ボルシチの起源と調理法について考察した拙論です。2部構成のうち、後半の「調理法」に当たります。
拙論の完全なかたち(すべての画像付き)は、PDF文書のみで提供します。
下記をクリックしてください。PDF文書が開きます。
〈目次〉
第T章 はじめに
第U章 ボルシチの語源を巡って
第V章 ボルシチの基本食材ビート
第W章 古代ローマ起源説について
第X章 ボルシチの出現
第Y章 ボルシチのレシピ(ロシア帝国時代)
第Z章 ボルシチのレシピ(旧ソ連〜現代)
*** 初出一覧
◇ 第Y章 ボルシチのレシピ(ロシア帝国時代)〔HTML文書2025.6.1改訂版〕
次に掲げるHTML文書は、PDF文書とほぼ同じ内容です。ただしPDF文書の頁番号(1−129)、「ビートの系統図」以外のすべての画像(図・写真など)、およびロシア語テキストのアクセント記号が省略されています。またブラウザの種類によっては、一部の記号・ルビ・特殊文字などが正しく表示されない場合があります。
このページには、第Y章「ボルシチのレシピ(ロシア帝国時代)」を掲載します。第T〜X章と第Z章は、それぞれ別のページに移動してください。
戻る =この章の始めに戻る
(1) 古いレシピの読みかた
(2) 18世紀後半の料理書
(3) リョーフシンの料理書
(4) アヴヂェーエヴァの料理書
(5) ビートの色を出すための工夫
(6) モロホヴェツの料理書
(7) アレクサンドロヴァ=イグナーチエヴァの料理書
註
参考文献
ウクライナ風ボルシチ 一覧表
この章では、筆者が収集したロシア帝国時代の料理書の中からボルシチのレシピを抜粋し、それらのテキストを読み解きながら、現在の調理法(旧ソ連時代以降、次章)に至るまでの過程を辿ってみよう。
(1) 古いレシピの読みかた ⇨ 各項目: (2) (3) (4) (5) (6) (7) 註 参考文献 戻る
初めに、古い料理書を読むときに留意すべきことがらを挙げてみよう。
拙論の第U章で引用した料理書には、次のような解説がある:
かつてボルシチは борщевик(ハナウド)の汁物と呼ばれていた。〔中略〕その後、ボルシチにはビート製クワスが用いられた。作りかたはおよそ次のとおり。ビート製クワスを水で割り、それを粘土製または鋳鉄製のゴルショーク(壺)に注いで沸かす。その中に切り刻んだビート、キャベツ、ニンジン等々の野菜を入れて、壺をペチカの中に置く。煮えたボルシチに塩を振り、獣脂または植物油で炒めたタマネギ、ニンニク(1)、細かく砕いた豚脂で味を調える。〔中略〕裕福な家ではボルシチに肉を入れて煮込んでいた。(U[43] 120頁、U[44] 137頁)
第X章で述べたように、この作りかたは食材を入れた壺をペチカの中で調理することを前提としたもので、ペチカを持たない現代の一般家庭には適用できない。したがってボルシチの古いレシピを読むに当たり、概ね19世紀以前と以後において、台所の設備が旧式のペチカなのか、それともペチカの焚き口に直火の調理台が取り付けられているのか、あるいはペチカなしで直火の調理台だけなのかを区別する必要がある。
また、現代人から見て古いレシピの説明があまりにも簡潔で、食材の分量、調理の時間や温度などが記されていない場合もあることを、あらかじめ心得ておかなければならない。
前掲のケイティ・スチュワートは、昔のレシピの曖昧さに触れて、次のように述べている:
昔の料理書の作り方の説明は、楽しくなるくらいあいまいで、きわめて個性的だ。〔中略〕われわれは材料の重さや〔中略〕オーブンの温度など細かい説明に慣れているので、「十分に粉を上にふる」とか「適当にする」といった説明に最初とまどうだろうが、けっきょく、料理はいつの時代でも、適切な判断と個人の味覚の問題なのである。だから中世の料理人は、作り方の指針である必要な材料だけを教えて、おいしい料理を生み出すインスピレーションをわれわれに残してくれたのだ。(W[54] 247−248頁)
しかしこのような好意的、かつ楽観的な考えかたは、古いレシピを現代風にアレンジする場合は有効かもしれないが、それを史実に基づいて正確に復元しようと試みる場合は、むしろ誤った方向へ導かれる危険性があるだろう。後述の В.А. Лёвшин(以下「リョーフシン」と記す)『ロシアの台所』校訂本([1])には、この復元作業に対する極めて慎重な姿勢が示されている:
この素晴らしい本を200周年に向けて再発行するに当たり、私たちは歴史的なレシピを復元しようとは努めなかった。遊び半分ではない、真剣で学問的な復元作業は、長期にわたる多面的な考証を要するもので、ごく限られた専門家の関心を呼び起こすかもしれない。いっぽうレシピを無理やり現代化することは、その対極にあって、私たちはそれを避けたかった。([1] 401頁)
拙論の第W章で取り上げたアピキウスの料理書について、次のような指摘がある:
実際、アピキウスのレシピはそのままではほとんど使えないものなのです。というのは分量を全く記しておらず、調理法と調理時間にも言及していないからです。(W[1] 4頁)
最も議論を呼ぶ問題は、アピキウス、あるいは誰にせよこのレシピを書いた人物は、どの程度の分量の材料を用いて、どんなふうに組み合わせるかについて、わざわざ明記していないことにあった。料理方法や料理時間についても、ほとんど指示がない。どれにせよ、このようなことにヴァリエーションがあると、結果として作り出されるものも劇的に変化することが予想される。(W[51] 90頁)
バーバラ・ウィートンは、昔のレシピを読み解くことがいかに難しいかを率直に認めている:
中世のレシピには、材料の分量と割合、そして調理の時間もほとんど記されていないため、その解釈は困難である。従ってできあがった料理があっさりしているのか、しつこいものなのか、また、汁が多いのか少ないのかを知る手がかりはほとんどない。([2] 33頁)
前掲のルヴェルは、いまでは欠かせない情報が抜けている理由について、次のように推察する:
料理書は同じことばを話す人々に向けて書かれているので、いちいち説明したりはしないものなのだ。〔中略〕確かに、昔の料理書と今の料理書との違いは、前者が調理時間を分量と同じく明らかにしていない点にもある。当然誰でも知っていると考えていたのかもしれない。(W[29] 126−127頁)
ロシアの古いレシピを集めた Б.Н. Головкин も、ルヴェルと同じような見解を示している:
古いレシピは簡潔に書かれていた。それは経験豊かな主婦に対してわざわざ解説するまでもなく、詳細にわたって述べる必要がなかったからであろう。〔中略〕17〜18世紀、さらに19世紀前半に至っても、家庭の主婦はもとより裕福な貴族のコックですら、台所に時計は持たなかった。したがって調理時間を時・分・秒で計ることもなかった。時間はいつも別の尺度で、いわば調理特有の兆しで計っていた、たとえば「泡立ち始めるまで」「指で潰せるほど煮て軟らかくなるまで」「粥のように濃くなるまで」等々。しばしば次のように書かれていた:「パンを焼くときと同じようにペチカを焚き、そこに一晩、壷を置いておくこと」。これは時間の計測であり、かつ温度の計測でもあった。([3] 156−157頁)
前掲のマックス・ミラーも、これらと同じ意見を述べている:
歴史上ほとんどの時代において、レシピは料理人によって料理人のために書かれたものであり、レシピを読む人はみな『よき材料』とは何なのか、『適当な頃合い』とはいつなのかを心得ていたのだ。(W[48] 10頁)
なお、中世末期のフランスでは、「読み書きのできる料理人がたいへん少なかった」([2] 10頁)。このことも、レシピが簡潔に書かれていた理由のひとつと考えられる。14世紀の宮廷料理人「タイユヴァンの頃は、料理の技術は観察と実践によって伝達されていた。〔中略〕ほとんどの料理人は文盲であり、料理の知識は体で覚えたものであった」(同 38頁)。「当時は、料理は親方から見習いに、口承の伝統にのっとって伝えられていた。タイユヴァンは口伝の料理を体系化し、書き残して本にした最初の一人だった。印刷技術の発明以前のことである」([4] 10頁)。この「口伝の料理」のレシピは、すでに「誰でも知っている」(W[29] 127頁)ことがらについては省略されることが多かったため、現代では肝心な情報が抜け落ちているように見えるのであろう。
以上、ロシアの古いレシピを読むさいの注意点として、@ 台所設備(ペチカまたは直火の調理台)の区別、A 現代とは異なる簡潔な記述、の2つを挙げておいた。これらのほか、さらにB番目として、レシピがその時代の料理を正しく伝えているのかどうかについて、あらかじめ考慮に入れておく必要がある。前掲のバーバラ・ウィートンは、次のように指摘する:
ある特定の時代の料理を考察する場合、その時代の料理書が、当時の人々が実際に作っていた料理の記録であると断定すべきではない。遠い過去に発案された伝統的な料理を作る料理人もいれば、数々の新しい料理に挑戦する者もいる。これらの新しい料理は全く記録されないこともあり、また書き記されたとしても、それは往々にしてずっと後のことなのである。([2] 55頁)
Сюткины は著作の中で、ロシア料理には「レシピを記録する習慣が無い」ことが大きな欠点であった、しかし外国料理が押し寄せた18世紀を総括する気運の高まりを受けて、同世紀末にはまるで雨後の筍のように、レシピを体系化して記録しようとする出版物が相次いで現れた、と述べている([5] 9−11頁)。それらの中でも特筆すべきは、「この時期としては極めて先駆的な―ロシア料理復興のきっかけを作った」(X[12] 282頁)と評されるリョーフシンであろう。В.В. Похлёбкин によれば、彼は1816年に ≪Русская поварня≫『ロシアの台所』を初めて出版した(V[3] 11頁)。けれども А.В. Аношин と В.С. Михайлов (以下「Аношин 他」と記す)は、それより約20年早く「1796年にリョーフシンは『ロシアの台所』を上梓した」と述べており([6] 6−7頁)、さらに Сюткины はこの「1816年初出」説を誤りと断言して、同上書はそれより約20年早く、リョーフシン翻訳・編集の料理事典に収められたと指摘する(2)([5] 39−43頁、285−286頁)。拙論の筆者は料理事典(全6巻、1795〜1797年)の復刻版([7])を入手して、Аношин 他と Сюткины の初出に関する情報が正しいことを確認した。1796年発行の料理事典第5巻、40−90頁には『ロシアの台所』前半のレシピが収められている。これに対して М. Марусенков は、『ロシアの台所』の初出が料理事典であることを認めたうえで、「ロシア料理、調理技術と食料保存の方法に特化した」単行本に限ってみれば、1816年版はロシアで初めて出された同国料理書であると主張する(3)([1] 398頁)。細かな書誌情報はさておき、リョーフシンは自著の序文の中で、外国文化の影響によってロシア古来の料理が失われつつある現状を嘆きながら、次のように述べている(この序文は料理事典第5巻に初めて現れ、後年『ロシアの台所』単行本に再掲された(4)):
それゆえ本書ではロシア料理のすべてを叙述することは不可能であり、まだ記憶に残っているものだけを拾い集めて満足せざるを得ないであろう。なぜならロシア料理の歴史において、他のヨーロッパ諸国とは異なり、[レシピを]記録して印刷したという例が全くないからである。([7] 第5巻1頁、[1] 417頁)
Сюткины の前掲書には、リョーフシンの料理事典(第1巻1795年)よりも23年早く、1772年に公刊された С.В. Друковцев の著作を皮切りに、1790年まで合計4名の著者と7点の図書([5] 10−11頁)が挙げられ、同じく別の著作では、1772年から1791年まで合計5点の図書(W[43] 24頁)が載っている。したがって前段の一節は、これらの先行文献、すなわちリョーフシンよりも早く現れた料理書について何も言及しておらず、彼の独りよがりな見解に過ぎない、と批判することはできよう(5)。とはいえ、危機感を抱いて自国料理のレシピを収集した著者のひたむきな姿勢は、高く評価されてしかるべきである。そして18世紀末から19世紀初めにかけて出版されたリョーフシン『ロシアの台所』(料理事典と単行本)には、先ほどのバーバラ・ウィートンの指摘を考慮するとしても、その時代に作られた料理が基本的に反映されていると考えてよいのではなかろうか。
いずれにせよ、18世紀末にはロシアで初めて料理書が出版されたことは確かである。Сюткины は著作の中で、前掲のリョーフシンの指摘(ロシアでは料理を記録・印刷する習慣が無い)を受けて、次のように述べている:「最初のロシア料理書が現れたのは、ようやく18世紀末になってからである。それよりも以前の、すべての[料理に関する]情報は、〔中略〕年代記[の写本]に稀に出てくる言及や、たいていの場合、19世紀の著者たちによる二次的な記述に負うところが多い」(W[43] 21頁)。これとは対照的に、15世紀半ばにドイツで印刷技術が発明されて以来、ヨーロッパでは数多くの料理書が世に出たことは周知の事実である。
このようにロシアでは料理の記録が疎かにされてきた原因のひとつとして、ロシア文化の中で料理そのものを「低俗なもの」と見なす傾向があったことが挙げられる。「ロシア文化の環境において食べ物を話題にすることは歓迎されません。なぜならそれはその人の精神性が乏しいことの徴であり、その人の関心が狭いことの証明でもあるからです。〔中略〕ロシア料理は芸術ではなく、伝統や習慣に基づいているのであり、したがってその品々はより単純かつ合理的に作られるのです(6)」([8] 第2版67頁)。この А.В. Сергеева の言葉に象徴されるように、ロシアでは人間が生命を維持するための食物摂取、すなわち「食べる行為」と、人間の精神的な活動としての「文化」「芸術」とを切り離す傾向が強かった。それはキエフ・ルーシ建国以来の国教であった東方正教では、「斎」と呼ばれる食事制限が導入され、キリスト教の他の宗派と比べてより厳しく守られてきたこととも深く関わっている(7)。その結果、食事制限が習慣化されるに伴い、本来の正しい宗教的な意味が見失われ、食事は肉体的な必要を満たすための「低俗な」営みであって、「高尚な」、創造的な営みではないとする考えが人々の中に浸透していった。
それゆえ日常の食生活に関する古い伝統的な考え(固定観念)がしだいに薄れて、人間の活動全般における「文化」の一部としての「食文化」の意義が認められるようになったのは、比較的最近のことである。このあたりの消息について『亡命ロシア料理』の著者は、次のように述べている:「食べ物について読むことはおろか、書いたり話したりすることはなおさら堅く禁じられていた、古からのロシアの伝統によって。〔中略〕事情が大きく変わったのは、ようやく1990年代の末になってからである。ロシアの人々はついに、おいしい食べ物について遠慮せず語るようになった。料理本や雑誌の特集記事、テレビの料理番組が大量に、ありあまるほど現れた」(V[28] 7頁)。とはいえ、永らく続いた伝統が一朝一夕に廃れるわけではない。次の А.В. Павловская の指摘(苦言)は、ロシアにおける料理の研究がいまなお低い地位にあることを物語っている:「国民の栄養の諸問題を研究することは、不幸な運命を背負っている。錚々たる学者たちはこの問題をくだらないものとして無視する。いっぽうこれに関心を寄せる者たちは、何とか科学的な体裁を整えて、たいていは難解な専門用語に満ちあふれた論文や本を書くのだが、2頁目まで読み進めるのは不可能である」(W[83] 357頁)。
さて、この章の冒頭で引用したボルシチの古い作りかたは、食材を壺に入れて煮込み、濃厚なスープを作るという点において、フランス料理のポタージュと相通じるものがある。フランス語の potage(ポタージュ)は、ケルト語から変形した pot(壺、鍋)を語源として、現在では「液体料理の総称」を意味する(T[8] 619頁)。玉村豊男によれば、ポタージュとは「”鍋 POT”に入れて調理したもの」、つまり「なべもの」であり、「鍋にぶちこんで火にかけた」ポトフーと同じような「ごった煮」である([9] 157頁)。ボルシチもまた、ハナウドの汁物から始まり、時代とともに新しい食材を取り込みながら、料理用ビートを中心とする本格的な「なべもの」へと進化したと言えるであろう。その要因として、シチーと同じくボルシチは「もともと、家にある手近な野菜をあれこれ煮込むスープであった」([6] 6頁)ことが挙げられる(拙論34頁 註(3)参照)。
この章の初めに掲げた料理書には、さらに次のようなくだりがある:
かつては、といっても今日と同じように、主婦は誰でも自分のやりかたで、ありあわせの食材を用いて、ボルシチを煮込んでいた。(U[43] 120頁、U[44] 137頁)
ウクライナに近いロシアのクバン地方のボルシチを紹介した一節より:
どの村でも、どの家庭においても、ボルシチは自分のレシピで作っていた。主婦にとって食べ物が手に入りやすくなればなるほど、食材リストも長くなっていった。(U[56] 179頁)
これらの記述に共通して言えることは、自己主張の強い料理用ビートを必須食材とするボルシチの包容力、言い換えればいかなる食材に対してもビートが優越性を保ち、それらをひとつの煮込みスープにまとめ上げる統率力、といったものであろう。さまざまな食材を自分の色に染め上げるという点において、ビートはカレー粉の原料ターメリックに匹敵するほど強烈な個性を持っている。しかしながらその反面、個性が強いゆえの裏返しとして、たとえば他の食材の色を保ったまま組み合わせることが難しい、くり返し煮ると色褪せてしまう、土臭い独特の風味に対して人々の好き嫌いがはっきりと分かれる、等々の〈弱点〉があることも否定できない。これは結果的に食材としてのビートの応用範囲を狭めることにもつながっているのである(ただしその応用範囲を広げる試みについては、拙論74頁 註(16)参照)。
(2) 18世紀後半の料理書 ⇨ 各項目: (1) (3) (4) (5) (6) (7) 註 参考文献 戻る
前掲の Куткина 他は、ロシアで初めて料理書が出版されたのは「1772〜1816年」とする(U[52] 62頁)。 Сюткины によれば、リョーフシンの事典(第1巻1795年)よりも早く現れた料理書の著者(姓)は次のとおり:1773(正しくは1772)〜1786年 С.В. Друковцев(別の綴り:Друковцов、以下この綴りで記す、著作4点)、1787年 Аненков(正しくは Анненков、同1点)、1790年 Н.П. Осипов(同1点)、Н. Яценков(同1点)、合計7点。前述のように、Сюткины の別の著作(W[43] 24頁)には、1772〜1791年、合計5点の図書が載っている。
料理名「ボルシチ」の最も古いレシピは、『ロシアの台所』校訂本の編者によれば、1779年に С.В. Друковцов が『料理雑記』に書き留めているという([1] 49頁、ただしレシピ本文の引用は無い)。ここではロシア国民図書館(略語 РНБ、サンクトペテルブルグ)所蔵の『料理雑記』([10])原本から筆者が書き写したテキストを紹介してみよう。同上書の全頁は、ロシア国立図書館(略語 РГБ、モスクワ、旧称レーニン図書館)の公式サイトでも自由に閲覧できる(8)。
| ☞ | 以下に引用するロシア帝国時代の文献の書名とレシピ本文は、すべて新正字法に基づき、単語の綴りや語尾変化も含めて、現代ロシア語の基準に従って書き換えたものである(例: レシピ1 пастирнакъ → пастернак、レシピ3 書名 кандиторский → кондитерский)。ただし他の模倣作と比べやすくするため、句読法、古語・廃語などはそのまま残した(例:レシピ3 обще → обще のまま、現代の同義語 вместе に書き換えない)。 |
|---|
【レシピ1】(図1) ⇨ レシピ: 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 戻る
С.В. Друковцов ≪Поваренные записки≫ СПб., 1779.(С.В. ドルコフツォフ『料理雑記』サンクトペテルブルグ、初版1779年)([10] 12−13頁=図1)。
レシピ本文は通し番号「21」で始まり、料理名「ボルシチ」の見出しは無い。なお、同上書のレシピは動詞の不定形が常用され、動詞の命令形は珍しい。このことは、著者が一部の項目(たとえばボルシチ)については、何らかの理由により、文体の統一をしないまま掲載したことを意味している。(太字=動詞の命令形)
21. Возьми коренья, петрушки, пастернак, сельдерею, лук, морковь, репу, свёклу, капусту свежую, всего по равной доле, очистя изруби, налей красным бульоном, положи без жиру всякого мяса, ветчины, говядины, телятины, баранины, изрезав мелко кусками, горсть перцу нетолчёного, вари в котле под крышкою, и как всё оное поспеет, заквась крепко уксусом, положи соли по пропорции, будет борщ.(図1)
21. パセリの根(9)、パースニップ、セロリ、タマネギ、ニンジン、カブ、ビート、生キャベツをそれぞれ同量ずつ用意せよ、洗って切り刻め、赤いブイヨン(10)を注げ、小さく切った、脂身のない種々の肉類、[すなわち]ハム、牛肉、仔牛の肉、羊肉や、また挽いていない胡椒[の粒]ひと握りを入れよ、蓋をした鍋で煮よ、それらすべてが煮えたら、酢を充分に加えよ、適量の塩を入れよ、[そうすれば]ボルシチができる。([10] 12−13頁)
図1・図2 省略 ⇒ PDF文書 参照
【レシピ2】(図2) ⇨ レシピ: 1 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 戻る
Н.П. Осипов ≪Старинная русская хозяйка, ключница и стряпуха≫ СПб.,1794.(Н.П. オーシポフ『古いロシアの主婦、食料管理人と料理女』サンクトペテルブルグ、[第3版(11)]1794年)([11] 8−9頁=図2)
著者名は Н. О. のイニシャル表記。「真正かつ古来のロシア料理」(副題の表現)のレシピ・食物保存法・家事全般に関する項目は、すべてアルファベット順の配列。
БОРЩ. Приготовя часть лучшего мяса, небольшой кусок ветчины и курицу или цыплёнка, положить в горшок перекладывая квашеною изрезанною свёклою и свежею капустою; дать вскипеть под крышкою. Потом взяв пшённых или овсяных круп, кусок солёного ветчинного сала или шпику, положа в деревянную ступку толочь, дабы сделалось тестом; и положа сие в горшок, приложить туда немного петрушки, пастернаку или чабру; покрыть крепко и поставить в вольной дух часа на два или и более не вынимая ничего. При постановлении на стол посыпать немного перцем.(図2)
ボルシチ 良質な肉の一部、ハムの小片、鶏または若鳥を用意し、それらと切り刻んだ発酵ビートや生キャベツを重ねながら、ゴルショーク(壺)の中に詰める。蓋をして沸騰させる。そのあと黍またはオートミール、塩漬けハムの脂身または豚脂1切れを取って木製の鉢に入れ、ペースト状になるまですり潰す。それをゴルショークに入れながら、パセリ、パースニップまたはチャービルを少し加える。[蓋を]しっかり閉じて、2時間またはそれ以上、[ペチカから]何も取り出さずに、余熱のもとに置く。食卓に供するさい、胡椒を少し振りかける。([11] 8−9頁)
『ロシアの台所』校訂本([1])の編者 М. Марусенков は、Н.П. Осипов『古いロシアの主婦〔下略〕』には家事全般に関する助言がちりばめられており、もしそれらが入っていなければ、ロシア料理に特化した初めての出版の栄誉はこの本に帰せられたであろう、と述べている([1] 397−398頁)。同上の助言とは、たとえば害虫駆除([11] 83頁・178−179頁・193−194頁)、紡績糸の染色(同 90−96頁)、床掃除(同 156−157頁)などに関するものである。
なお、『古いロシアの主婦〔下略〕』([11] 15−16頁)には бураки(ビートの汁物)のレシピが2つ収められているが、18世紀末の料理書では、бураки とボルシチとの明確な区別はなかったとされる([1] 49頁)。
図3・図4 省略 ⇒ PDF文書 参照
(3) リョーフシンの料理書 ⇨ 各項目: (1) (2) (4) (5) (6) (7) 註 参考文献 戻る
次に、リョーフシンの著作とその剽窃本からレシピを引用してみよう。後述のように、料理書の盗作はいつどこでも行なわれており、この分野における草創期にあったロシアも例外ではない。
【レシピ3】(図3)(盗作:図4−6) ⇨ レシピ: 1 2 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 戻る
@ В.А. Лёвшин ≪Словарь поваренный, приспешничий, кондитерский и дистилляторский≫ М., 1795−1797.(В.А. リョーフシン『料理人、助手、菓子職人と酒造係の事典』モスクワ、1795〜1797年、全6巻)。料理事典の第5巻(1796年)40−90頁には、≪Поварня русская≫『ロシアの台所』前半のレシピ集が収められた。ボルシチのレシピ:第5巻45頁所収。
A В.А. Лёвшин ≪Русская поварня≫ М., 1816.(В.А. リョーフシン『ロシアの台所』単行本、モスクワ、初版1816年)。ボルシチのレシピ:原本9頁所収。(図3)
| ☞ | 書名 ≪Поварня русская≫(1796年)または ≪Русская поварня≫(1816年)のうち、поварня(台所)は現代では廃語となっており、文脈のうえで「ロシア料理」とも訳せるが、ここでは他のロシア料理書と区別するために、あえて「ロシアの台所」と訳した。 |
|---|
ここでは筆者が購入した料理事典の復刻版([7] 第5巻45頁)に加えて、『ロシアの台所』単行本の @ 原本([12] 9頁=図3)、A 復刻版([13] 9頁)、B 新正字法・新度量衡への書き換え版([14] 33頁)、C 200周年記念の校訂本([1] 49頁・420頁)をもとに、リョーフシンのレシピを紹介してみよう。これら5点の文献所収のテキストはすべて同一である(ただし書き換え版[14]では、現代風に改変された複数の箇所がある)。なお、彼のレシピにはジャガイモが含まれていない理由について、校訂本の編者は、16〜17世紀、つまりこの食材のなかった時代のロシア料理が反映されているからだ、と指摘する([1] 45頁)。
Борщ. Говядину кусками и немного ветчины, также целую курицу приставить вариться с водою. Взять бураков обще с их травою, скрошить полосками, обжарить в масле коровьем, смочить отваром из горшка, в котором варится говядина и курица; после бураки совсем выложить к говядине, приправить солью, прибавить укропу, луку и уварить очень спело.(図3)
☞ 下線部の箇所は、書き換え版([14] 33頁)では次のとおり: обще ⇒ вместе / курица; после ⇒ курица. После / укропу ⇒ укропа / луку ⇒ лука
ボルシチ 牛肉の小片数個、ハム少々、および鶏丸一羽を[ゴルショークに入れて]水煮する。発酵ビート(12)をその葉茎とともに取って千切りにして、バターで炒め、牛肉と鶏肉が煮られているゴルショークから煮汁を加えて[ビートに]含ませる。そのあとビートをすべて[ゴルショークの]牛肉[と鶏肉]に移し、塩で味を調え、ディル、タマネギを加えて、さらによく煮込む。([7] 第5巻45頁、[12] 9頁、[13] 9頁、[14] 33頁、[1] 49頁・420頁)
前掲の Ковалёв 他(T[25] 209頁)は、リョーフシンのレシピ本文(前段と同じ)を引用したあと、原レシピには無い食材の分量を記しているが、これは現代人による解釈の試みに過ぎない:
Наиболее раннее описание блюда из свёклы типа борща приводит В. Лёвшин (1797 г.): <...> На 2 порции: свёкла 300, говядина 200, ветчина 50, курица 100, вода 1 л, масло топлёное 50, зелень.
ボルシチのようなビート料理の最も古い記述は、В. リョーフシン(1797年)が残している:〔レシピ本文省略〕2人前:ビート300g、牛肉200g、ハム50g、鶏肉100g、水1ℓ、バターオイル50g、香味野菜。(T[25] 209頁)[ボルシチの調理法に関する「最も古い記述」は、レシピ1の С.В. Друковцов(1779年)と見なされる]
次に掲げる『ロシアの台所』校訂本([1] 49頁)には、編者の解釈によるレシピと分量が載っている。この章の始めに引用したように、編者は「レシピを無理やり現代化すること」を避けようとしたはずである(同 401頁)。しかしながら下記の文章を見る限りでは、かなり自由な解釈がなされており、しかも原レシピにあるディルとタマネギは除外され、逆に原レシピには無いローリエと黒胡椒が付け加えられた。その理由について編者は何も語らない(同 49頁)。
400 г говяжьей грудинки 100 г ветчины 1/4 суповой курицы 250 г бураков (квашеной свёклы) 75 г свекольной ботвы 30 мл растительного масла соль 2−3 лавровых листа свежемолотый чёрный перец
1 Говядину и курицу промойте, залейте 2,5 л холодной воды и поставьте на плиту.
2 Доведите до кипения, снимите пену и варите на слабом огне 2−3 часа до полной готовности мяса.
3 Бураки нарежьте крупной соломкой и быстро обжарьте на сильном огне.
4 Процедите бульон через мелкое сито, добавьте бураки и варите на слабом огне 10 минут.
5 Говядину и курицу нарежьте кусочками, ветчину − соломкой, свекольную ботву нашинкуйте.
6 Добавьте все ингредиенты в бульон, положите лавровый лист, соль и перец и варите ещё 5 минут.
7 Снимите с огня и дайте настояться 20−30 минут. Обратите внимание, что этот борщ готовится без картофеля и капусты. Вместо капусты мы используем свекольную ботву.牛バラ肉400g ハム100g 煮出し用の鶏1羽の1/4 発酵ビート250g ビートの葉と茎75g 植物油30㎖ 塩 ローリエ2〜3枚 挽きたての黒胡椒
1 牛肉と鶏肉をよく洗い、2.5ℓの冷水を注ぎ、レンジに置きなさい。
2 沸騰させて灰汁を取り、さらに弱火で2〜3時間煮込んで肉を完全に調理しなさい。
3 発酵ビートを粗く千切りにして、強火で手早く炒めなさい。
4 目の細かい濾し器にブイヨンを通し、[濾したブイヨンに]発酵ビートを加えて、弱火で10分煮なさい。
5 牛肉と鶏肉を角切り、ハムは千切りにして、ビートの葉と茎は細かく刻みなさい。
6 これらすべての食材をブイヨンに加えたあと、ローリエ、塩、胡椒を入れて、さらに5分煮なさい。
7 火から下ろし、20〜30分蒸らしなさい。このボルシチは、ジャガイモとキャベツを入れないで作ることに留意されたい。キャベツの代わりに私たちはビートの葉と茎を用いている。([1] 49頁)
なお、校訂本の編者 М. Марусенков は、18世紀後半に料理を含む参考書が続々と刊行された理由について、Сюткины とは別の見解を述べている。すなわち、この時代には貴族階級の国家と軍隊への強制的な勤務が免除されたことを受けて、多くの貴族が自分の世襲領地に移り住み、その経営に専念し始めた。そしてこれらの領主たちに向けた実用書、たとえば布地染色から家畜の病気治療・家庭料理のレシピに至るまで、広い分野の知識を集めた農村経営の指南書が、相次いで出版されるようになったのである([1] 398頁)。
さて上掲のバーバラ・ウィートンも指摘するように、料理書の歴史において盗作があとを絶たないことは、よく知られた事実である。「完全なる剽窃は料理書にみられる不変の特徴であり、その結果一つのレシピは、その発案者の死後も長年にわたって様々な著作にみられることになる」([2] 12頁)。残念ながらリョーフシンが記録したレシピもまた、その例外ではない。筆者の知る限り、単行本『ロシアの台所』(1816年)の刊行から約20〜60余年を経て世に出た料理書5冊には、程度の差こそあれ、彼のレシピが剽窃または模倣されている。
盗作1 まず、М. Андреев『新しい完全な料理ハンドブック』([15] 142頁、初版1837年、書名:抄訳=図4)の後半は、リョーフシン『ロシアの台所』のレシピを巧妙に、つまり部分的に書き直したテキストから成っている。その改変箇所の多くは、語順入れ替えや同義語への書き換えのほか、原レシピに書かれた動詞の不定形を、ただ命令形に変化させたものである。(太字=動詞の命令形)
6. КАК ДЕЛАТЬ БОРЩ. Надобно говядину кусками и немного ветчины, также целую курицу приставить вариться с водою. Возьми бураков обще с их травою, скроши полосками, обжарь в коровьем масле, смочи из горшка отваром, в коем варится говядина и курица; после бураки совсем выложь к говядине, приправь солью, прибавь укропу, луку и увари очень спело.(図4)
6. ボルシチの作りかた 牛肉の小片数個、ハム少々、および鶏丸1羽を水煮する必要がある。発酵ビートをその葉茎とともに取れ、千切りにせよ、バターで炒めよ、牛肉と鶏肉が煮られているゴルショーク(壺)から煮汁を取って含ませよ。そのあとビートをすべて牛肉に移せ、塩で味を調えよ、ディル、タマネギを加えよ、さらによく煮込め。([15] 142頁)
盗作2 次に、著者不明『台所と貯蔵庫におけるハンドブック』([16] 15−16頁、第2版1854年:復刻版、〔初版1851年:筆者は未見〕、書名:抄訳=図5)には、露骨な丸写しとは言えないが、明らかに『ロシアの台所』を下敷きにしたと考えられるレシピが載っている。
14. Борщ. Нарезав говядину, несколько ветчины и очищенную курицу небольшими кусками, всё это, перемыв, налить водою и дать хорошо увариться. Между тем взяв бураков или свёклу с её травою, скрошить тоненькими полосками, обжарить в коровьем масле, налить мясным отваром, положив туда и упомянутую мясную провизию, приправить по вкусу солью, укропом, луком и всё уварить хорошенько. К борщу подают по большой части хорошую сметану.(図5)
14. ボルシチ 牛肉、ハム少々および皮を剥いだ鶏肉を小さく刻む。それらすべてを洗い直し、水を加えてよく煮込む。いっぽう、発酵ビートまたは葉茎付きのビートを千切りにして、バターで炒め、肉汁を注ぎ、そこへ先述の[3種類の]肉を入れ、好みにより塩、ディル、タマネギで味を調え、すべてよく煮込む。ボルシチには主として(13)良質のサワークリームを添える。([16] 15−16頁)
リョーフシンの原レシピでは、(フライパンで炒めた)ビートに肉汁を加え、蒸し煮(тушить)したあと、それらを(ゴルショークの中で煮込んだ)肉類に入れる。つまり、最終的には煮込み用のゴルショークの中で仕上げる。現代風に言えば、炒めた食材を深鍋に入れるわけで、ごく自然な手順である。しかし上記の盗作レシピによれば、ビートに肉汁を加えたあと、そこへ、つまり全く逆に、炒めたビートの中へ肉類を入れる。この場合、ビートを炒めるための器は、底の浅いフライパンではなく、煮込み用の深鍋を使う必要があろう。これは、原レシピの字句を改竄したために起きた混乱であり、盗作がもたらす弊害(原作の破壊)のひとつの典型的な例である。後述のレシピ6「ウクライナ風ボルシチ」でも触れるように、『台所と貯蔵庫におけるハンドブック』([16])は、複数の種本からの寄せ集めに過ぎない。
図5・図6 省略 ⇒ PDF文書 参照
盗作3 第三に、Н. В. Г.『最新料理書』([17][18] 全3巻、第3版1865年:復刻版=図6)は、『台所と貯蔵庫におけるハンドブック』([16])所収のすべてのレシピを並べ替え、字句をほんの少し書き換えただけの、いわば「完全なる剽窃」である。ただし『最新料理書』は全3巻に膨れあがっているため、コピー元の種本を数冊寄せ集めたものと思われる(後述のレシピ6「ウクライナ風ボルシチ」参照)。ボルシチのレシピはその第1巻([17])91頁「14.」に収められ、『台所と貯蔵庫〔下略〕』([16])とほぼ同じテキストである。言い換えれば、盗作が新たな盗作を生む構図が浮かび上がってくる。(網かけ=[16]との異同箇所)〔訳文省略〕
14. Борщ. Нарезав говядину, несколько ветчины и очищенную курицу небольшими кусками, всё это, перемыв, налить водою и дать хорошенько увариться. Между тем, взяв бураков или свёклу с её травою, скрошить тоненькими полосками, обжарить в коровьем масле, налить мясным отваром, положив туда и упомянутую мясную провизию, приправить по вкусу солью, укропом, луком и всё уварить хорошенько. − К борщу подают по большей части хорошую сметану.([17] 第1巻91頁=図6)
盗作4 第四に、Найденов『若い主婦のための手引き』([19] 14頁、初版1865年)所収のボルシチのレシピは、前段の『最新料理書』([17] 第1巻91頁)の文章とほぼ同一である。(網かけ=[17]との異同箇所)〔訳文省略〕
Борщ. Нарезать говядину, несколько ветчины и очищенную курицу небольшими кусками, всё это, перемыв, налить водою и дать хорошенько увариться. Между тем, взять бураков или свёклу с её травою, искрошить тоненькими полосками, обжарить в коровьем масле, налить мясным отваром, положив туда и 削除 упомянутую мясную провизию, приправить по вкусу солью, укропом, луком, и всё уварить хорошенько. − 削除 К борщу подают по большей части хорошую сметану.([19] 14頁)
盗作5 第五に、А. Макарова『ロシア料理書』([20] 1880年、新正字法・新度量衡への書き換え版)のボルシチのレシピには、『台所と貯蔵庫におけるハンドブック』([16])と酷似した表現がいくつか含まれている([20] 52頁)。調理の後半でビートの中へ逆に肉類を入れる、おかしな手順も同じである。それゆえこの料理書は、80余年前に書かれたリョーフシン『ロシアの台所』(料理事典第5巻、1796年)の部分的な盗作であり、もともとペチカを前提とした古いレシピの寄せ集めであって、少なくともボルシチに関する限り、もはや時代遅れとなったと言わざるを得ない。〔ロシア語テキスト・訳文 省略〕
図7・図8 省略 ⇒ PDF文書 参照
(4) アヴヂェーエヴァの料理書 ⇨ 各項目: (1) (2) (3) (5) (6) (7) 註 参考文献 戻る
Е.А. Авдеева(以下「アヴヂェーエヴァ」と記す)は、リョーフシンに続いて19世紀半ばに現れ、後述の Е.И. Молоховец(以下「モロホヴェツ」と記す)が名声を博すまでのいわば先駆けとして、みずからの経験に基づいた実用的なレシピを書いた女性作家である。
【レシピ4】(図7) ⇨ レシピ: 1 2 3 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 戻る
Е.А. Авдеева ≪Карманная поваренная книга≫ СПб.,1846.(Е.А. アヴヂェーエヴァ『料理ポケットブック』サンクトペテルブルグ、初版1846年)([21] 21頁=図7)。
14. Борщ. Возьми два фунта говядины, нарежь ломтями, фунт ветчины также изрежь ломтиками, налей двумя штофами холодной воды и поставь на плиту или в печь. Между тем искроши полкочня капусты, обдай кипятком и дай постоять: свёклу нашинкуй полосками. Потом откинь капусту на сито, выжми из неё воду и вместе со свёклой и луком поджарь в коровьем масле, всыпь ложку муки, размешай хорошенько, и выложи в бульон. Фунт сосисок изжарь на сковороде в коровьем масле, и также положи в бульон. Когда подавать на стол, заправь сметаной.(図7)
14. ボルシチ 牛肉2フント(14)[819g]を取って厚めに切り、ハム1フント[409.5g]は薄く切れ、冷水2シトフ[2.46ℓ]を注ぎ、[直火の]調理台またはペチカに置け。いっぽう、キャベツ半玉を細かく刻み、熱湯を〉注ぎかけて、しばらく待て。ビートを千切りにせよ。その後キャベツを笊に上げて水気を切り、ビートやタマネギと一緒にバターで炒めよ、小麦粉[大]匙1杯を振りかけ、よくかき混ぜて、[牛肉・ハムの]ブイヨンの中に入れよ。ウィンナソーセージ1フント[409.5g]をフライパンでバター炒めにせよ、それを同じくブイヨンに入れよ。食卓に出すとき、サワークリームで味を調えよ。([21] 21頁)
アヴヂェーエヴァ以前の料理書と比べてみて、『料理ポケットブック』には具体的な数値が度量衡(フント・シトフなど)とともに明記されていること、また調理の説明もより詳しくなっていることが特徴的と言えよう。彼女の原レシピによれば、肉類(牛肉・ハム・ウィンナソーセージの合計)と水の量の比率は、約0.7対1である(肉類1638gに対して水2.46ℓ)。前掲のレシピ3では、現代人による解釈とはいえ、肉類(牛肉・ハム・鶏肉の合計)と水の比率がほぼ半分の0.35対1(T[25] 209頁)となっている。もしアヴヂェーエヴァの指示どおりに作ってみれば、さぞや汁気の少ない固形物ばかりのスープができあがるであろう。むろんゴルショーク(壺)に入れてペチカでじっくりと蒸し煮すれば、どろりとした具材の食感と濃厚なスープの味わいが楽しめるだろう。これは、水分蒸発量の極めて少ない、蓋付き(またはパン生地を蓋代わりに被せた)ゴルショークならではの長所である。
前掲の В. Струц によれば、ウクライナ人にとってボルシチとは単なるスープ、つまり液体ではない。それゆえボルシチは皿に「注ぐ」(налить)ものではなく、「盛り上げて出される」(насыпают: 不定人称文)ものである(X[21] 11頁)。また美食家として知られるロック歌手 А. Макаревич(以下「マカレーヴィチ」と記す) は、ある雑誌の料理記事の中で、「ボルシチの中には肉がたっぷりと、すべて[の食材]がたっぷりとなければならない」、そして彼の作ったボルシチを食べたあとは、メインディッシュが欲しいという考えは浮かんでこない、と述べたうえで、彼のレシピを公開している([22] 70−71頁)。昔からよく言われているように、本物のシチーとボルシチは「スプーンが立つ(ложка стоит)」くらいに具だくさんである。同上の А. Макаревич のレシピは、水と食材の比率に関する限り、明らかにアヴヂェーエヴァ以来の伝統を受け継ぐものであろう(彼のレシピの詳細は拙論127−128頁参照)。
なお、前章で述べたように、ウクライナ料理の特徴を成す「複数の熱処理」は、アヴヂェーエヴァのレシピにおいては「ゆで」と「炒め」、また「蒸し煮」(ペチカの場合)の方法が用いられ、さらに下ごしらえの段階で「塩漬け」と「燻製」(=ハム・ソーセージ)の手順が加わる。これらの複合的な調理法は、ボルシチの滋養豊かで濃厚な味わい(сытность и наваристость)を創り出すために欠かせないものである。
【レシピ5】(図8) ⇨ レシピ: 1 2 3 4 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 戻る
同上のアヴヂェーエヴァ『料理ポケットブック』([21] 21−22頁=図8)より、「ウクライナ風ボルシチ」のレシピを紹介する。(網かけ=動詞の不定形、太字=動詞の命令形、下線部=副動詞)
15. Борщ малороссийский. Возьми четыре фунта говядины, одну молодую курицу, мелко искрошенной свёклы, полкочня свежей искрошенной капусты, кореньев петрушки, пастернаку, обжаренного в масле луку, всё это налей по пропорции бульоном и приквась кислыми щами с огуречным рассолом, положи туда же ветчины и дай всему кипеть. Когда мясо вполовину поспеет, положи чайную чашку пшена и, сваря вгустую десять яиц, разрежь их пополам и, вынув желтки, начини белки следующим фаршем: изруби яичные желтки, прибавив шпику, белого хлеба, размоченного в бульоне, соли, перцу, рубленой зелёной петрушки и, обмазав их сырыми яйцами, обжарь на сковороде в коровьем масле, положи в борщ и заправь сметаной.(図8)
15. ウクライナ風ボルシチ 牛肉4フント[1638g]、若鶏1羽、細かく刻んだビート、刻んだ生キャベツ半玉分、パセリとパースニップの根、油で炒めたタマネギ、[以上のもの]を用意せよ、これらすべてに適量のブイヨンを満たせ、そして塩漬けキュウリの汁を混ぜたクワスで酸味を付けよ、そこにハムを入れて煮立たせよ。肉がある程度[直訳:半分ほど]煮えたときに、ティーカップ(15)1杯の黍を入れよ、また卵10個を硬くゆでよ、それらを半分に切れ、卵黄を取り出し、卵白[の穴]の中に次のような詰め物をせよ:豚脂・ブイヨンで柔らかくした白パン・塩・胡椒・刻んだ生パセリを加えて卵黄を潰せ、そして[溶いた]生卵で塗ったあと、フライパンの中でバター炒めにせよ、[それらを]ボルシチに入れよ、サワークリームで味を調えよ。([21] 21−22頁)
図9・図10 省略 ⇒ PDF文書 参照
【レシピ6】(図9) ⇨ レシピ: 1 2 3 4 5 7 8 9 10 11 12 13 14 15 戻る
生前のアヴヂェーエヴァは数多くの模倣作に悩まされていた。新聞『モスクワ報知』1844年第114号には、アヴヂェーエヴァの名前を騙る偽作に向けた警告文が現れ、これらの贋物に対する抗議文を、彼女自身も雑誌『祖国雑記』1851年3月号に投稿した(16)。しかしながら前項のレシピ5、つまり『料理ポケットブック』([21]、初版1846年=図8)所収の「ウクライナ風ボルシチ」に限って言えば、このレシピは彼女の書き下ろしではなく、同時代の先行文献の書き写しである可能性が極めて高い。なぜなら、次に掲げる М. Андреев『新しい完全な料理ハンドブック』([15]、初版1837年=図9)のレシピ6と酷似しているからである。もっとも、すでに明らかなように、『新しい完全な料理ハンドブック』そのものがリョーフシンの料理書を剽窃しており、そこに収められた「ウクライナ風ボルシチ」([15] 97−98頁)が著者の書き下ろしであるという保証はない。以下、その全文を紹介する。(網かけ=動詞の不定形、太字=動詞の命令形、下線部=副動詞)
О ДЕЛАНИИ УКРАИНСКОГО БОРЩА. Взявши говядины четыре фунта и ещё офаршированную куриным мясом молодую курицу, свёклу искрошенную мелко, не очень много свежей капусты, перемытые коренья петрушки, пастернаку и обжаренный в масле лук, и всё оное налей бульоном и приквась; ещё положить туда ветчины и дать всему этому кипеть; а коль скоро мясо вполовину поспеет, тогда положить четверть фунта сарацинского пшена; сваривши вгустую десять яиц, разрежь их пополам; вынувши желтки, начини белки таким фаршем, а изрубивши варёные желтки, положить должно туда говяжьего сала, французского хлеба, соли, перцу, рубленой зелени, сырых яиц; смажь яйцами, обжарь на сковороде, положи в суповую чашу, при отсылке же забели сметаною и натри мускатного орешку.(図9)
ウクライナ風ボルシチの作りかた 牛肉約4フント[1638g]、さらに挽肉用の部位を除いた若鶏1羽、細かく刻んだビート、適量 [直訳:多過ぎない量]の生キャベツ、よく洗ったパセリとパースニップの根、油で炒めたタマネギを用意して、これらすべてにブイヨンを満たせ、酸味を付けよ、そこにハムを入れてすべて煮立たせる。まもなく肉がある程度煮えたときに、米1/4フント[約102g]を入れる。卵10個を硬くゆでて、それらを半分に切れ、卵黄を取り出し、卵白 [の穴]の中にそのような詰め物をせよ、ゆでた卵黄を潰して、牛脂・フランスパン・塩・胡椒・刻んだ香味野菜、生卵を入れなければならない。[溶き]卵で塗れ、フライパンの中で炒めよ、スープ容器に入れよ、出すときにはサワークリームで味を調えよ、ナツメグをすり潰せ。([15] 97−98頁)
この文章には、動詞の不定形・命令形・副動詞などが不規則に混じり合って、読みにくい箇所も散見される。それはおそらく他人のレシピを盗んで切り貼りしたせいであろう。そこでアヴヂェーエヴァは、主に命令形を用いて文体の統一を図り、語句を修正して読みやすいレシピに改良した(例:「挽肉用の部位を除いた若鶏」⇒「若鶏」、「米」⇒「黍」(17))。そして次に掲げる『台所と貯蔵庫におけるハンドブック』([16] 16−17頁、第2版1854年)の著者は、この修正方針を受け継ぎ、さらに理解しやすいレシピになるよう努めている。(網かけ=動詞の不定形、下線部=副動詞)
15. Борщ Малороссийский. Взяв 4 фунта говядины, одну молодую курицу, мелко искрошенную свёклу, несколько свежей капусты, накрошенных кореньев петрушки и пастернаку, обжаренного в масле луку, всё это налить хорошим бульоном; потом приквасить, положить туда же ветчины и дать всё кипеть. Когда мясо вполовину поспеет, положить 1/4 фунта сарацинского пшена, наконец сварить вгустую и нарезав пополам 10 яиц, вынуть желтки, а белки начинить фаршем из желтков и, обмазав их сырыми яйцами, обжарить на сковородке и вложить в суповую чашу. При подаче борща к столу, должно забелить его сметаною.
Примечание. Фарш для белков приготовляется из изрубленных варёных желтков, говяжьего сала, белого хлеба, соли, перцу и рубленой зелени.
15. ウクライナ風ボルシチ 牛肉4フント[1638g]、若鶏1羽、細かく刻んだビート、いくらかの生キャベツ・よく切り刻んだパセリとパースニップの根・油で炒めたタマネギを用意して、これらすべてに良質のブイヨンを満たす。そのあと酸味を付け、そこにハムを入れてすべて煮立たせる。肉がある程度煮えたときに、米1/4フント[約102g]を入れる。最後に卵10個を硬くゆで、半分に切ってから卵黄を取り出し、卵白 [の穴]の中に卵黄から作られた詰め物をする。それらを[溶いた]生卵で塗り、フライパンの中で炒めて、スープ容器に入れる。ボルシチを食卓に出すときに、サワークリームで味を調えなければならない。
註:卵白用の詰め物は、ゆでて潰した卵黄、牛脂、白パン、塩、胡椒と刻んだ香味野菜から作られる。([16] 16−17頁)
同上書([16])の著者は、動詞の命令形をすべて不定形に書き換えて、さらに卵白用の詰め物についての長い説明を「註」のほうへ移すことにより、ボルシチのレシピ本文が簡潔になるよう工夫している。とはいえ、このレシピは先行文献2点([15][21])からの剽窃であることに変わりはない。
前掲のН. В. Г.『最新料理書』にも、明らかに先行文献のレシピ、とりわけ『台所と貯蔵庫におけるハンドブック』([16])とほぼそっくりのものが収められた([17] 第1巻91−92頁=図10)。すでに述べたように、ここにも盗作が盗作を生む負の連鎖がくっきりと現れている。(網かけ=[16]との異同箇所)〔訳文省略〕
15. Борщ малороссийский. Взяв 4 фунта говядины, одну молодую курицу, мелко искрошенную свёклу, несколько свежей капусты, накрошенных кореньев петрушки и пастернаку и обжаренного в масле луку, всё это налить хорошим бульоном; потом, приквасив, положить туда же ветчины и дать всему кипеть. Когда мясо вполовину поспеет, положить 1/4 фунта сарацинского пшена. Наконец, сварив вгустую и разрезав пополам десяток яиц, вынуть желтки, а белки начинить фаршем из желтков и, обмазав их сырыми яйцами, обжарить на сковородке и вложить в суповую чашу. При подаче борща к столу, должно забелить его сметаной.
Примечание. Фарш для белков приготовляется из изрубленных варёных желтков, говяжьего сала, белого хлеба, соли, перцу и рубленой зелени.([17] 第1巻91−92頁=図10)
図11・図12 省略 ⇒ PDF文書 参照
【レシピ7】(図22) ⇨ レシピ: 1 2 3 4 5 6 8 9 10 11 12 13 14 15 戻る
アヴヂェーエヴァが生前に著し、自分の真作であることを言明した家庭実用書4点のうち、最も早く世に問うた『ロシアの経験豊かな主婦のハンドブック』([23] 198−199頁、第6版1848年、〔初版1842年:筆者は未見〕=図11)より、「ウクライナ風ボルシチ」のレシピを紹介する。同じ著者による上掲のレシピ5([21])、および先行文献([15])のレシピ6と比較されたい。
1-е. Малороссийский борщ. Взять говядины, ветчины, пол-утки или четверть гуся, вымыть; налить сколько нужно воды, поставить вариться и собравшуюся на верху пену снять дочиста. Положить кочанной кислой капусты, кислых исшинкованных бураков, да одну луковицу, и дать увариться. Заправку для всяких борщей делают следующую: взять чайную чашку проса и хорошенько вымыть; четверть фунта ветчинного сала толочь в деревянной ступке, или чашке, вместе с просом, пока сделается тесто, заправить им борщ и дать прокипеть. Борщ можно делать разными манерами. К говядине прибавляют дичину, гуся, утку, но всегда кладут ветчину, а для вкуса заправляют просом с ветчинным салом. Борщ из зелени хорошо варить с курицей, а кто любит, прибавлять по вкусу бурачного рассолу.(図11)
第一品 ウクライナ風ボルシチ 牛肉、ハム、家鴨半羽または鵞鳥1/4羽を用意して洗浄する。必要な量の水を注ぎ、煮立てる。表面に浮いてきた灰汁をきれいに取る。丸ごと漬けたキャベツ、細かく刻んだ発酵ビート、タマネギ1個を入れて煮込む。どんなボルシチにも合う調味料は次のとおり:黍1ティーカップを用意してよく洗う。ハムの脂身1/4フント[約102g]を、黍と混ぜ合わせて、ペースト状になるまで木臼または鉢の中で押し潰す。それをボルシチに加えて沸騰させる。ボルシチはさまざまな方法で作られる。牛肉には野禽、[家禽の]鵞鳥や家鴨を加えることがあるが、ハムは必ず入れる。うまみを出すため、ハムの脂身を混ぜた黍で味を調える。香味野菜を入れたボルシチは鶏肉とよく合う。好みにより、塩漬けビートの汁を加える。([23] 198−199頁)
アヴヂェーエヴァの同上書第5章([23] 198−219頁、全46品)は、次の見出しで始まる:РАЗНЫЕ КУШАНЬЯ, ВОШЕДШИЕ В УПОТРЕБЛЕНИЕ У РУССКИХ(ロシア人のあいだで流行り始めた各種の食べ物)。その一品目に前段の「ウクライナ風ボルシチ」が登場している。したがって著者が紹介するレシピは、ロシア帝国の一部であったウクライナの純粋な民族料理というよりも、むしろ当時のロシア人社会の中で流行っていた、いわば異国風料理のひとつとして捉えるべきものではなかろうか。
先に触れたように、アヴヂェーエヴァの家庭実用書には数多くの贋作が存在した。それらは彼女の没後も多様なかたちで出版され続けて、今日に至っている。その中でも『料理の秘訣(18)』([24] 170頁、第11版1877年:復刻版、書名:抄訳)に収められた「ウクライナ風ボルシチ」のレシピは、真作『ロシアの経験豊かな主婦のハンドブック』([23])とほぼ同一のテキストである。(網かけ=[23]との異同箇所)〔訳文省略〕
1-е. МАЛОРОССИЙСКИЙ БОРЩ. Взять говядины, ветчины, пол-утки или четверть гуся, вымыть; налить, сколько нужно, воды, поставить вариться − и собравшуюся на верху пену снять дочиста. Положить кочанной кислой капусты, кислых исшинкованных бураков, да одну луковицу, и дать увариться. Заправку для всяких борщей делают следующую: взять чайную чашку проса и хорошенько вымыть; четверть фунта ветчинного сала толочь в деревянной ступке, 削除 или чашке, вместе с просом, пока сделается тесто, заправить им борщ и дать прокипеть. Борщ можно делать разными манерами. К говядине прибавляют дичину, гуся, утку, но всегда кладут ветчину, а для вкуса заправляют просом с ветчинным салом. Борщ из зелени хорошо варить с курицей, а кто любит, 削除 − прибавлять по вкусу бурачного рассола.([24] 170頁)
【レシピ8】(図12) ⇨ レシピ: 1 2 3 4 5 6 7 9 10 11 12 13 14 15 戻る
次に、「アヴヂェーエヴァの著作」(СОЧИНЕНИЕ ЕКАТЕРИНЫ АЛЕКСЕЕВНЫ АВДЕЕВОЙ)と銘打った贋作、著者不明『ロシアの経験豊かな主婦の完全な料理書(19)』([25] 93頁、新増補版1875年、書名:抄訳=図12)の中から、「ウクライナ風ボルシチ」のレシピを引用してみよう。
66. Борщ на манер настоящего малороссийского. Борщ этот варят из говядины, баранины, свинины, утки и гуся, или берут разных мяс и живности, варят всё вместе; также кладут ветчину и сосиски. Взять 2 фунта говядины, фунт ветчины и половину гуся, вымыть, положить в горшок, чтоб мяса было полгоршка, налить водой, поставить вариться и снимать пену. Свежую капусту нашинковать крупно, полосками в палец шириною, а свёклу обыкновенным манером; положить в кастрюлю, обжарить в масле, прибавить ложку муки, вымешать, развести бульоном, положить в горшок, вместе с двумя нашинкованными луковицами. Кому угодно, можно положить перед обедом фунт сосисек, обжарив их сначала в масле, подправить двумя ложками сметаны и приквасить по вкусу уксусом. После подправки, дать борщу прокипеть ключом. Борщ варят иногда из кислых бураков, с кислою, шинкованною капустою. (6)(図23)
66. 純正ウクライナ風ボルシチ このボルシチは牛肉・羊肉・豚肉・家鴨・鵞鳥から作られる。つまり、さまざまな家畜・家禽の肉をみんな一緒に煮て作られる。またハムやウィンナソーセージも用いられる。牛肉2フント[819g]、ハム1フント[409.5g]、鵞鳥半羽を用意して洗浄する。[それらを] 容器の半分を満たす程度に、ゴルショークに入れる。水を注ぎ、煮立てて、灰汁を取る。生キャベツを指の太さほどに粗く、ビートをいつもと同じように、千切りにして、フライパンに入れ、油で炒め、小麦粉大匙1を加えてよくかき混ぜ、ブイヨンで[全体を]溶かし、細かく刻んだタマネギ2個と一緒にゴルショークに入れる。必要に応じて、食卓に出す前に、まず油で炒めて、サワークリーム大匙2で味を調え、好みにより酢で和えたウィンナソーセージ1フント[409.5g]を[ゴルショークに]入れてもよい。味付けのあと、ボルシチをよく沸騰させる。ボルシチは発酵ビートや、切り刻んだ発酵キャベツから作られることもある。(6人分)([25] 93頁)
さらに、アヴヂェーエヴァと Н.Н. Маслов の「共著」とされる『ロシアの経験豊かな主婦の料理書』([26] 90頁、第5版1912年(20):復刻版、書名:抄訳)の中から、「ウクライナ風ボルシチ」のレシピを紹介する。この本は、上掲『ロシアの経験豊かな主婦の完全な料理書』([25])の書名から「完全な」を省き、Н.Н. Маслов を共著者として加えており、レシピ数の増加(1258→1346)を考慮すれば、その改訂新版に当たるものと考えられる。この「共著」は、現代ロシアにおいて新正字法による書き換え版として再発行され(21)、あたかもアヴヂェーエヴァの真作・単著(?)のように見なされている。旧版([25])の料理名「純正ウクライナ風ボルシチ」から「純正」が削除され、「家庭料理風に」が追加された「ウクライナ風ボルシチ(家庭料理風に)」のテキスト([26] 90頁)は、旧版とほぼ同じである。(網かけ=[25]との異同箇所)〔訳文省略〕
121. Борщ
на манер настоящего削除 малороссийский. (По домашнему). 追加(家庭料理風に) Борщ этот варят из говядины, баранины, свинины, утки и гуся, или берут разных мяс и живности, варят всё вместе; также кладут ветчину и сосиски. Взять 2 фунта говядины, фунт ветчины и половину гуся, вымыть, положить в горшок, чтобы мяса было полгоршка, налить водою, поставить вариться и снимать пену. Свежую капусту нашинковать крупно, полосками в палец шириною, а свёклу обыкновенным манером; положить в кастрюлю, обжарить в масле, прибавить ложку муки, вымешать, развести бульоном, положить в горшок, вместе с двумя нашинкованными луковицами. Кому угодно, можно положить перед обедом фунт сосисек, обжарив их сначала в масле, подправить двумя ложками сметаны и приквасить по вкусу уксусом. После подправки, 削除 дать борщу прокипеть ключом. Борщ варят иногда из кислых бураков, 削除 с кислою, шинкованною капустою. (6).
Примечание: если борщ подаётся с сосисками, то называется: "польский". 追加(註:もしボルシチがウィンナソーセージを添えて供されるときは、「ポーランド風」と呼ばれる)([26] 90頁)
(5) ビートの赤色を出すための工夫 ⇨ 各項目: (1) (2) (3) (4) (6) (7) 註 参考文献 戻る
これは経験的に知られていることだが、ビートは「煮込み過ぎると色が悪くなるので注意し」なければならない([27] 14頁)。煮込み料理のボルシチにとって、まさにビートの鮮やかな赤色は、その風味とともに不可欠な要素のひとつである。ボルシチはよく煮込まないと深みのある味が出て来ず、かといって煮込み過ぎるとビートの赤色が褪せてしまう(レシピ14「着色料」参照)。いわば相反する命題を抱えている、料理人泣かせの厄介なスープかもしれない。
| ☞ | ボルシチは「たくさん作って、あたため直していただくのがおいしいのです」([28] 181頁「ボルシチ」)。ただしビートの赤色が完全には保たれないことに留意されたい。作り置きのボルシチを再加熱する場合、筆者の経験によれば、鍋に入れて強火で沸騰させると色褪せが起きやすく、一人分(一皿)ごとに電子レンジで温めると色褪せが起きにくい。ただし会食などで多人数分をまとめて提供するときは、電子レンジの方法では間に合わない。したがって多人数の場合、時間的な余裕をもって、鍋に入れたボルシチを弱火〜中火でゆっくり再加熱し、沸騰させないことが望ましい。 |
|---|
それゆえまだ流通量が少なく、食材としてのビートの希少価値が高い日本では、たとえば酒井宗康シェフ(ロシア料理店「サモワール」)のレシピのように、ボルシチを仕上げる直前にビートを加えて赤色を保つ工夫がなされている([29] 78−79頁「ウクライナ風ボルシチ」、82頁「野菜のボルシチ)。「ビーツは火を通しすぎると色が悪くなってしまいますから、スープ作りの最後の工程で下ゆでしておいたビーツを加え、さっと煮るだけにして美しい色合いに仕上げます」([30] 11頁「ウクライナの伝統料理 ボルシチ」)。またビートの缶詰を用いる場合、同じく最後に缶詰の汁を加えることも推奨されている([31] 20頁「チェルボニ・ボルシチ/紅いボルシチ」)。
このようなひと手間をかけること、つまりビートの食欲をそそる赤色を出すためのさまざまな工夫は、筆者の知る限り、すでに19世紀半ば以降、ロシアの料理書に記録されている。ここではそのようなレシピをいくつか拾い集めておこう。
| ☞ | すり下ろして炒めたビート・ニンジンなどを煮込んだボルシチの中に、さらにビートだけを別のフライパンで炒めて加える、ラザレフ夫妻の「独特のレシピ」がテレビで紹介された(NHK BSプレミアム「スープの魔法『ロシア・ボルシチ』」、2019年5月3日放送)。この作りかたは、以下に掲げる赤色を保つ工夫と基本的に同じである。 |
|---|
【レシピ9】(図13) ⇨ レシピ: 1 2 3 4 5 6 7 8 10 11 12 13 14 15 戻る
著者不明『最新ロシアの経験豊かな熟練料理人、経理係と菓子職人』([32] 第1巻17−18頁、第2版1844年:リプリント版、〔初版1837年:筆者は未見〕、書名:抄訳=図13)より、「ウクライナ風ボルシチ」を引用する。(網かけ=原文の誤植)
2. БОРЩ МАЛОРОССИЙСКИЙ Разбив на части 4 фунта говядины грудинки, положи в кастрюлю, налей холодною водою и кипяти; присыпав ложку соли, накрой, кипяти час.
Между тем, положив в суповую кастрюлю 5 штук свёклы, по два корня: петрушки, сельдерея, пастернака, порея, луку, мелко шинкованных с четвертью фунта чухонского масла (или, собственно по-малороссийски, свиного сала), поджаривай на плите, мешая лопаткою, чтобы смесь не пригорела ко дну кастрюли. Присыпав горсть муки, разведи бульоном, в котором варится говядина.
Перемыв говядину, клади в борщ, накрой и кипяти час. Подлив бутылку кислых щей, за полчаса до стола положи в борщ полфунта разварёного в бульоне и протёртого сквось[正 сквозь]сито рису, и выпустив с ложки готовый фарш, положи разрезанную жареную утку, накрой и тихо кипяти.
Выжав сквозь салфетку стакан соку из тёртой красной свёклы, смешай его с полфунтом сметаны, клади в борщ и, вскипятив один раз, подавай с петрушкою.(図13)
2.ウクライナ風ボルシチ 牛バラ肉4フント[1638g]を小片に分けて鍋に入れよ、冷水を注いで沸かせよ。塩大匙1を振り、蓋をして1時間沸かせよ。
そのあいだに、ビート5個、パセリ・セロリ・パースニップ・リーキ・タマネギそれぞれの根を2個ずつ、細かく刻んだものを、バター(または純ウクライナ風に、豚脂)1/4フント[約102g]とともにシチュー鍋に入れて、直火の調理台で炒めよ、鍋底に[野菜の]混ぜものが焦げ付かないように、へらでかき回しながら。小麦粉1握りを振りかけて、牛肉を煮ているブイヨンで溶かせ。
牛肉を[取り出して]よく洗い、[シチュー鍋の]ボルシチに入れ、蓋をして1時間沸かせよ。[ビート製]クワス1ボトル(22)を注ぎ、食卓に出す30分前に、ブイヨンで柔らかく煮て篩で裏ごしした米1/2フント[約205g]をボルシチに入れよ。この練り物[=米]を加えたあと、切り分けて炒めた家鴨を入れて、蓋をして静かに沸かせよ。
すり下ろした赤ビートの汁1カップ(23)をナプキンで絞り、サワークリーム1/2フント[約205g]とともに混ぜて、ボルシチに入れよ、そしてひと煮立ちさせたあと、パセリを添えて供せよ。([32] 第1巻17−18頁)
上記のレシピには、ビートの赤色を鮮明に出す工夫として、炒めたビートその他に牛ブイヨンを加えて煮込んだあと、最後の仕上げ用に赤ビートの濾し汁を注ぐという、いわば二度手間をかけることが記されている。もしクワスを「ビート製クワス」と解釈するならば、じつに三度手間となる(次のレシピ10参照)。
なお、このレシピによれば、サワークリームを鍋に入れて煮立てることになっており、同じようなやりかたは他の料理書にも登場する。むろんボルシチを食卓に出したあとサワークリームを加える調味方法は、当時もよく知られていた(例:レシピ3 盗作2〜5)。参考までに、А.Н. Толиверова『若い主婦のための料理書』([33] 20−21頁、初版1885年:復刻版)より、「ウィンナソーセージ入りウクライナ風ボルシチ」の一部(同 21頁)を抜粋してみよう。ここでは、@ 食卓に出すまえにサワークリームを熱いボルシチに注ぐ、A サワークリームを別の容器に入れて提供する(現代ではこちらが主流)、のいずれかが推奨されている。(網かけ=原文の誤植)
В свёклу можно положить, кто любит, сшикованную[正 сшинкованную]луковицу и 1/2 ложки муки и сахару. Когда капуста и свёкла упреют, прокипятить и прибавить для цвета соку из натёртой сырой свёклы с примесью уксусу, дать немного постоять и затем пропустить этот сок через сито в борщ и дать снова прокипеть. Перед тем, как нести на стол, положить сметану или подать её отдельно.
ビートには、好みにより細かく刻んだタマネギ、小麦粉と砂糖[各々]大匙1/2を入れてもよい。キャベツとビートがとろりとしてきたら、ひと煮立ちさせて、色を良くするために、酢を混ぜた生ビートのすり下ろし汁を加える、[すなわち]しばらく置いてから篩を通してこの汁をボルシチに注ぎ、再び沸騰させる。食卓に運ぶまえに、サワークリームを[ボルシチに]入れる、または別々に提供する。([33] 21頁)
前掲書([33]、初版1885年)のレシピで「色を良くするために〜再び沸騰させる」のくだりは、先行文献『非精進と精進の料理(24)』([34]、初版1876年)にある「ウクライナ風ボルシチ」の箇所を思い起こさせる。とはいえこのような類似の例は、枚挙にいとまがないのも事実である。
Для красного цвета, растереть 1/2 красной сырой свёклы, налить уксусу, дать немного постоять и минут за 5 до отпуска прибавить этот сок сквозь сито в борщ, дать прокипеть и подавать.
赤色を良くするために、生の赤ビート1/2個をすり下ろし、酢を注ぎ入れ、しばらく置いて、[食卓に]出す約5分前に篩を通してこの汁をボルシチに加え、沸騰させてから提供する。([34] 26頁)
図13・図14 省略 ⇒ PDF文書 参照
【レシピ10】(図14) ⇨ レシピ: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 11 12 13 14 15 戻る
И.М. Радецкий 著『美食家大鑑』([35] 第3巻81−82頁、初版1855年:復刻版=図14)より、「ウクライナ風ボルシチ」を紹介する。
90) БОРЩ МАЛОРОССИЙСКИЙ. Potage borche à la russe. Нашинковать мелко свёклы, порея, петрушки и луку, изрезать на 8 частей кочан капусты, сложить в суповую кастрюлю, а между тем обланжирить кусок говядины с верхним жиром и когда вскипит, выбрать в холодную воду, вымыть, разрезать в порционные куски, сложить в кастрюлю вместе с свёклою, налить процеженным бульоном, прибавить по вкусу свекольного квасу, соли и пряностей, поставить на огонь и варить до готовности. − Обланжирить особо копчёную свиную грудинку и когда закипит, выбрать в холодную воду, вымыть, очистить кругом, разрезать порционными кусками, положить в борщ и варить вместе (*). − Пред отпуском снять жир, выбрать пряности, положить рубленного укропа, свекольного колера (**) и снабдить по вкусу солью и перцем. − Можно прибавлять гарнир и лейзон, <...>(図14)
[以下 82頁脚註]
(*) Наблюдать чтобы ветчина и говядина поспели вместе с кореньями и не переварились.
(**) Кн. 1, стр. 280.
90) ウクライナ風ボルシチ ロシア風ポタージュ・ボルシチ ビート・リーキ・パセリとタマネギを細かく刻み、キャベツ1玉を8等分して、シチュー鍋に積み重ねる。そのあいだ、表面に脂の付いた牛肉1塊を湯通しする。沸き立ったら取り出して冷水に浸し、洗い、人数分に切り、ビートの入った鍋に積み重ねる。濾したブイヨンを注ぎ、好みによりビート製クワス、塩、香辛料を加え、火にかけてじっくり煮込む。特級燻製の豚バラ肉を湯通しする。沸き立ったら取り出して冷水に浸し、洗い、回りをきれいにして、人数分に切り、ボルシチに入れて一緒に煮る(*)。提供するまえに脂を除き、香辛料を取り出し、刻んだディルとビートの着色料(**)を入れ、好みにより塩・胡椒を振る。付け合わせとリエゾンを添えてもよい。〔下略〕
[脚註](*) ハムと牛肉が[香味野菜の]根と一緒に仕上がるよう、また煮え過ぎないよう、注意すること。
(**) 第1巻280頁参照。([35] 第3巻81−82頁)
КОЛЕР СВЕКОЛЬНЫЙ. За 5 минут до отпуска натереть на тёрке очищенную красную свёклу, положить в кастрюлю, влить суповую ложку бульону, скипятить на огне, процедить сквозь салфетку и употреблять.
ビートの着色料 提供する5分前に、皮をむいた赤ビートを下ろし器ですり下ろし、鍋に入れ、ブイヨン大匙1を注ぎ、火にかけて沸騰させ、ナプキンで濾してから用いる。([36] 第1巻280頁)
上記のレシピは、同じ著者による『サンクトペテルブルグ料理』([37] 108−109頁、初版1862年:復刻版)の中にも載っている。「ビートの着色料」は「ビートのエッセンス」に替えられた。そのほか加筆・訂正された主な箇所は次のとおり:(下線部=加筆・訂正、網かけ=原文の誤植)
406. − Борщ малороссийский. Potage borche à la russe. Потаж борш[щではない]а-ля рюс. <...> положить в борщ и варить вместе. За 15 минут до отпуска изрубить мелко 1/2 фун., шпика, истолочь в ступке, положить 2 столовые ложки муки, размешать и развести немного холодным бульоном, вылить в кипящий борщ и прокипятить. Потом снять жир, выбрать пряности, положить рубленного укропа, свекольной эссенции, и снабдить по вкусу солью и перцем. Желающие могут прибавлять гарнир и лейзон.
406. ウクライナ風ボルシチ ロシア風ポタージュ・ボルシチ〔中略〕ボルシチに入れて一緒に煮る。提供する15分前に、豚脂1/2フント[約205g]を細く切り刻み、鉢の中ですり潰し、小麦粉大匙2を加え、冷たいブイヨン少々をよく混ぜて溶かし、それを熱いボルシチに注ぎ入れ、沸騰させる。そのあと[浮いた]脂を除き、香辛料を取り出し、刻んだディルとビートのエッセンスを入れ、好みにより塩・胡椒を振る。希望者は付け合わせとリエゾンを添えてもよい。([37] 108−109頁)
【レシピ11】(図15) ⇨ レシピ: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 13 14 15 戻る
В. Завадзкая『リトアニアの料理女(25)』([38] 12−13頁、初版1885年:復刻版=図15)所収の「ボルシチ」のレシピは、先行文献よりもさらに詳しく、ビートを用いた赤色の出しかたについて述べている。(網かけ=原文の誤植)
26. Борщ. Чтобы борщ был вкусен, необходимо делать его из рассола свежезаквашенной свёклы, иначе он будет горек на вкус и неприятен. − Взять по нескольку фунтов говядины <...> и ветчины, несколько грибов и штуки по две луку и порею; залить всё это водою, прибавить свекольного рассолу такое количество, чтобы борщ не был слишком кисел, и варить до тех пор, мясо не будет мягко. Жир снять, суп прочистить белками и <...> выдать к обеду.
Суп этом[正 этот]лучше всего подавать красным, что достигается следующим образом: истереть несколько больших свекловиц на тёрке, выжать сок, вскипятить и прибавить к борщу во время выдачи его к столу. Отдельно изжарить несколько свёкл, мелко изрезать их и, подавая к столу, бросить в миску: свёкла придаст цвет и вкус супу, который, вместе с тем, сделается гуще. Подбеливают этот суп сметаною, в количестве четырёх стаканов; для этого смешивают её с рубленною свёклой, разбавляют борщом и подваривают. Поджаренные колдуны из мяса или грибов и жаренные сосиски, мелко изрезанные, также употребительны к этому супу. Несколько вилков изрезанной на части капусты, положенной в этот суп, сообщают ему приятный вкус.(図15)
26. ボルシチ ボルシチをおいしくするためには、新鮮な塩漬けビートの汁が欠かせない、さもないと苦みを帯びて不快なものになる。〔中略〕牛肉とハム各々数フント、キノコ少々、タマネギとリーキ約2個ずつを用意する。水を満たし、ボルシチが酸っぱくならない程度に塩漬けビートの汁を加える。肉が柔らかくなるまで煮込む。[浮いた]脂を除き、卵白でスープの濁りを取り、〔中略〕昼食に出す。
このスープは赤色で提供するのが最も好ましい。次のようにすればよい:大きなビート数個を下ろし器ですり下ろし、汁を搾り、煮沸して、食卓に出すさいに加える。それとは別にビート数個を炒め、細く切り刻み、食卓に出すとき、[スープ]容器に入れる。ビートが色と風味をスープに与え、しかもスープはいっそう濃厚になる。このスープにサワークリーム4カップを加える。その作りかた:[サワークリームに]刻んだビートを混ぜ合わせ、ボルシチで薄めて、加熱する。このスープには、肉またはキノコ入りの焼いたコルドゥヌィ(ダンプリングの一種)や、細かく切り分けて炒めたウィンナソーセージを添えてもよい。このスープに入っている小さく切り分けたキャベツの結球も、まろやかな味を醸し出す。([38] 12−13頁)
図15 省略 ⇒ PDF文書 参照
(6) モロホヴェツの料理書 ⇨ 各項目: (1) (2) (3) (4) (5) (7) 註 参考文献 戻る
ロシア帝国時代の後期にいくたびも版を重ねて、ロシア料理書の分野で大きな影響を与えた、モロホヴェツ『若い主婦への贈り物』(書名:抄訳、以下『贈り物』と記す)の中から、「ウクライナ風ボルシチ」のレシピを抜き出してみよう。同上書について、詳しくは拙論「エレーナ・モロホヴェツ『若い主婦への贈り物』―あるロシア料理書の系譜― (1)(2)(3)(4)」(釧路公立大学紀要『人文・自然科学研究』第20・22・23・25号)を参照されたい。
| ☞ |
『若い主婦への贈り物』版数/出版年/出版地 |
|---|
図16 省略 ⇒ PDF文書 参照
【レシピ12】(図16) ⇨ レシピ: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 13 14 15 戻る
まず、『贈り物』初版1861年([39] 90−91頁=図16)の本文は次のとおり:(下線部=筆者、囲み線=原文の誤植)
37.) БОРЩ МАЛОРОССИЙСКИЙ. 3 фунта говядины с верхним жиром вымыть в тёплой воде, вскипятить раза два, снять накипь, вынуть, вымыть в холодной воде, разрезать на части, сложить в кастрюлю, налить процеженным бульоном, положить кореньев и кочан капусты разрезанный на 8 частей; когда капуста уварится, прибавить, по вкусу, свекольного рассола или хлебного кваса или уксуса, соли, варить до готовности. В борщ этот можно прибавить 1 фун. копчёной ветчины, которую вымыть в горячей воде, очистить, вскипятить раза два, вынуть, перемыть в холодной воде, нарезать кусочками, положить в борщ и варить вместе. Перед отпуском снять жир, вынуть капусту, положить её в кастрюльку, сложить туда же 1 фун. отваренной или печёной мелко нашинкованной свёклы, налить процеженным бульоном, вскипятить, влить для цвета сок от натёртой сырой свёклы, соли, перца.
ВЫДАТЬ: 2 1/2−3 фунта говядины. (1 фунт. ветчины.) 1 сельдерей, 1 порей. 2 моркови, петрушку. (2 луковицы.) 2−3 шт. лавров. листа. 10−20 зёрен английского перца. 1 мален. кочан свежей капусты. Свекольного рассола. 1 фунт свёклы. Соли, перца. Зелёной петрушки и укропа.
К этому борщу подаются фрикадельки 105, которые сварить в борще, или ушки жареные с мясом или грибами 133, или жареные нарезанные кусочками сосиски, жареная каша из гречневых круп 112 или 113.
В Малороссии приготовляется борщ этот ещё следующим манером: взять белого хлебного кваса пополам с водою вскипятить, опустить в него 3 фунта мяса, кореньев, лаврового листа, английского перца, сварить, процедить. Потом положить в него нашинкованную или кусками нарезанную капусту, или нашинкованную свёклу, или капусту со свёклою, сварить до готовности; взять 1/2 ложки мелко изрубленной зелёной петрушки и 1/2 ложки сельдерея, кусок свиного солёного сала, величиною в половину куриного яйца, 1/4 стакана пшена, всё это истолочь вместе, подправить щи или борщ.(図27)
37) ウクライナ風ボルシチ 表面に脂身のある牛肉3フント [1228.5g] を温水で洗い、[鍋に入れて]2回ほど沸騰させて灰汁を除き、取り出して冷水で洗う。小片に切り分けて鍋に積み重ね、濾したブイヨンを注ぎ、[香味野菜の]根、8等分したキャベツ1玉を入れる。キャベツがよく煮えたら、好みにより、塩漬けビートの汁、またはパン製のクワス、または酢、[さらに]塩を加えて、煮上げる。このボルシチには燻製ハム1フント[409.5g]を加えてもよい。ハムは熱水で洗い、[表面を]削ぎ落とし、[鍋に入れて]2回ほど沸騰させ、取り出して冷水でしっかり洗い、小片に切り分け、ボルシチに入れて一緒に煮ること。[食卓に]出すまえに[浮いた]脂を除き、キャベツを取り出して小鍋に移し替え、そこに煮た、または[オーブンで]焼いた、細かく切り刻んだビート1フント[409.5g]を積み重ねる。濾したブイヨンを注ぎ、沸騰させる。色を良くするため、すり下ろした生ビートの汁を注ぎ入れ、塩、胡椒[を振る]。
[召使に食材を]渡す: 牛肉21/2〜3フント[約1024〜1228.5g] (ハム1フント[409.5g]) セロリ[の根]1個 リーキ[の根]1個 (タマネギ2個) ローリエ2〜3枚 オールスパイス10〜20粒 生キャベツ小1個 塩漬けビートの汁 ビート1フント[409.5g] 塩、胡椒 生のパセリとディル[の葉]
このボルシチには、レシピ105番の肉団子が供される。それはボルシチの中で煮込む。またはレシピ133番の肉またはキノコ入りの炒めた小型餃子、または炒めて小さく切り分けたウィンナソーセージ、レシピ112または113番の炒めた蕎麦の実の粥[が供される]。
ウクライナでは、このボルシチは次の方法でも作られる。白パン製のクワスと水を半々に混ぜて沸騰させ、そこに肉3フント[1228.5g]、[香味野菜の]根、ローリエ、オールスパイスを加えて、煮込んで濾す。そのあと細かく刻んだ、または粗く切ったキャベツ、または細かく刻んだビート、またはキャベツとビートの両方を入れ、じっくりと煮込む。細かく切り刻んだパセリ[大]匙1/2とセロリ[大]匙1/2、鶏卵半分ほどの大きさの塩漬け豚脂1切れ、黍1/4カップを用意して、これらすべてをすり砕き、シチーまたはボルシチを調味する。([39] 90−91頁)
このレシピ37番には、接続詞 или「または」(下線部)の多用、つまり同語反復による文章の冗長さや、誤植(食材表 左2行目 1 фунт. ピリオド不要)など、改善すべき点があることは否めない。
すでに前項(6)で紹介したように、ボルシチの色を良くするため、すり下ろした生ビートの汁を入れるという調理の秘訣を、モロホヴェツも自著の中で述べている。彼女の助言に従えば、酢を混ぜる・ナプキンで濾す・煮沸する、といった手間をかけないで、そのまますり下ろした汁を作ればよい。この簡略化された方法は、いくつかの和書にも受け継がれている(26)。ただし別の著者によるレシピ14「着色料」の中で、「生ビートはボルシチに生臭い味をもたらす」ゆえに、「このやりかたは良くない」という批判があることを付言しておく(拙論109頁参照)。
図17 省略 ⇒ PDF文書 参照
【レシピ13】(図17) ⇨ レシピ: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 14 15 戻る
次に掲げる『贈り物』最終第29版1917年([40] 126−127頁、図17:126頁)では、ビート製クワスの作りかた、および「ウクライナ風ボルシチ」の新しい、ほぼ全面的に書き改められたレシピが載っている。(下線部=筆者、網かけ=原文の誤植)
Борщ. Примечание. Все борщи варятся одинаково в след. отношении: берут говядины от грудинки <...> и не кладут телячьих костей; варят белый бульон, кладут коренья, английский перец, лавр. лист и квас, который приготовляется разными манерами, а именно:
48) Квас для борща. 1) Употребляется квас от мочёной свёклы, см. часть II 3975.
2) Берут 1/2 фун. самого простого, чёрного, солдатского хлеба и 1/2 фун. кислого, чёрного хлеба побелее. Нарезать кусками, залить 3 бутылками тёпленькой, кипячёной воды, положить 6 шт. очищенной, ломтиками нарезанной, сырой свёклы, дать постоять два дня, днём на солнце, а ночью в летней, духовой печи, чаще мешая. На третий день квас готов и, варя борщ, употребить все 15 стаканов этого кваса, если будет приятной кислоты, если же будет слишком кисел, то разбавить кипячёной водой.
3) Квас трет. ман. Очищенную свёклу натереть на тёрке, залить кипячёной водой, поставить в тёплое место на 3−4 дня, процедить.
Примечание. Ко всякому роду борща подаются тоже поджаренные сосиски, каши и крутоны, какие указаны в примечании о щах.
49) Борщ малороссийский. Сварить бульон 1, из 2−3 ф. говядины от грудинки <...>, но лучше всего пополам со свежею свининою, налить 15 стаканов не воды, а процеженного вышеприготовленого кваса, если он будет приятной кислоты, если же будет кисел, то развести кипячённою водою и тогда уже взять его 15 стаканов. − Вскипятить его с мясом, снять накипь, опустить пучок связанных, между собою основных кореньев, букет зелени, 6−8 листочков свежего свекольника и зелёного луку от одной луковицы, положить ещё 2 луковицы, англ. перцу, лавр. листу, сварить, процедить.
Между тем 1/2 ф. кислой капусты выжать, обдать кипятком, выжать.
1 ф. красной свёклы испечь, очистить, нашинковать. 2−3 помидора, вычистив семечки, нарезать ломтиками и 1/4 стак. белых бобов отварить в бульоне отдельно. За 1 1/2 ч. до отпуска, положить в процеженный бульон, ветчины, шпику, капусту, сварить её. За 1/2 часа положить, помидоры, бобы, несколько картофелек, 1/2 стак. муки, размешанной с 1/2 стак. остывшего бульона, прокипятить, влить 1/2 стак. сметаны, опустить разрезанную на порции грудинку, можно прибавить куски жареной утки, подлить по вкусу квасу, добавить соли, вскипятить. В суповую миску можно влить сок натёртой красной свёклы, сок сырой или раз вскипячённый, некоторые кладут и самую[アクセント注意]натёртую сырую свёклу, зелёного укропу, залить кипящим борщом. Подавать к нему ватрушки с творогом 358, мясные пышки 353, или пышки с грибами, или с говядиной 351, 352 или крутоны из гречневых круп и пр.(図17)Выдать. 3 фунта разного мяса говядины свинины, ветчины, сосисок. Пучок основных кореньев. Пучок зелени с зелёным луком и свекольником. 1/2 ф. кислой или свеж. капусты,1 ф. свёклы. Квас. 1/2 стак. муки. 1/2 стак. сметаны. 5−10 англ. перцу, 1−2 лавр. листа. 2−3 шт. помидоров. 1/4 стак. бобов и 6 шт. картофеля. Укроп.
Вместо муки можно взять 1/2 ложки мелко изрубленной зелёной петрушки и 1/2 ложки сельдерея, кусок свежего свиного сала, величиною в пол куриного яйца и 1/4 истакана[正 стакана]пшена, всё это истолочь, подправить борщ.
ボルシチ 註:すべてのボルシチは次のように作ることが共通している:牛肉[の部位]はバラ肉〔中略〕から[選び]、仔牛の骨は用いない。白いブイヨン(27)を煮て、[そこに煮出し用の]根、オールスパイス、ローリエ、クワスを加える。クワスにはさまざまな作りかたがある、すなわち:
48) ボルシチ用クワス
1) 水漬けビート製クワスが[ボルシチに]使われる。[作りかたは]第U巻3975番参照。
2) ごくふつうの兵隊用の黒パン(28)1/2フント[約205g]、および酸味のある、あまり濃くない色の黒パン1/2フント[約205g]を用意する。[黒パンを] 細かく切り刻み、まだ温かい湯冷まし[直訳:沸騰させた水]3ボトル(29)を注ぎ、皮をむいて薄く切った生ビート6個を入れ、2日間そのまま置く。何度もよくかき混ぜながら、昼は日光に当て、夜は夏用ペチカ(30)の中に保つ。3日目にクワスはできあがる。もし口当たりの良い酸味があれば、このクワス15カップをすべて、煮込み中のボルシチに投入する。もし酸味が強ければ、湯冷ましを加える。
3) クワス[の作りかた]第3の方法。皮をむいたビートを下ろし器ですり下ろし、湯冷ましを注ぎ、3〜4日暖かいところに置いて濾す。
註:ボルシチ各種には、炒めたウィンナソーセージ、粥、クルトン[スープ用の浮き実]も添えられる。詳しくはシチーの註を見よ。
〔訳註〕黒パンは、発酵を促進させるサワー種(サワードウ)として用いられ、またクワスの風味を増し加える役割も果たす(Куткина 他 U[52] 297頁「 508 ビート製クワス」)。前掲のハーキュリーズは、ビート製クワスを作るときは、「有機ライ麦全粒粉またはライ麦スターター」(T[22] 68頁)、あるいは「硬くなったライ麦パン」(同 74頁、ライ麦パン=黒パン)などを入れることを勧めている。もし入れないと「ビーツの影響でクワスが濃くねっとりしてしま」う(同 68頁)。「これは〔中略〕望ましい出来上がりではない」(同 74頁)。
49) ウクライナ風ボルシチ バラ肉、〔中略〕しかし最も好ましいのは[牛肉と]新鮮な豚肉を半々に混ぜたもの、[いずれか]2〜3フント [819〜1228.5g]の素材より、[レシピ]1番のブイヨンを煮て作る。[初めに]水ではなく、上記の濾したクワスのうち、もし口当たりの良い酸味があれば、15カップを注ぐ。もし酸味が強ければ、湯冷ましで薄めて、[その中から]15カップを用いる。[準備した]肉とともに煮立て、灰汁を取り、主要な[香味野菜の]根をまとめて縛ったもの、香味野菜の束、生ビートの葉6〜8枚、ひとつのタマネギから採れたナガネギを入れる。さらにタマネギ2個、オールスパイス、ローリエを加えて煮込み、濾す。
いっぽう、発酵キャベツ1/2フント[約205g]を絞り、熱湯をかけて水気を切る。
赤ビート1フント[409.5g]を[オーブンで]焼き、皮をむき、細かく刻む。種を取り除いたトマト2〜3個を薄く切る。シロインゲンマメ1/4フント[約102g]を個別にブイヨンで煮る。食卓に出す90分前に、濾したブイヨンの中へ、ハム・豚脂・[発酵または生] キャベツを入れて、煮込む。30分前には、トマト・豆・ジャガイモ数個・冷めたブイヨン1/2カップに小麦粉1/2カップをかき混ぜたものを加え、よく煮立て、サワークリーム1/2カップを注ぎ、人数分に切った[牛]バラ肉を投じる。焼いた家鴨の肉片を加えてもよい。好みでクワスを足し、塩を振り、沸騰させる。スープ容器には、すり下ろした赤ビートの[絞り]汁(生またはいちど煮沸したもの)を注いでもよい。[絞り汁ではなく]すり下ろしたままの生の赤ビートや、ディルを入れることもある。そこに熱々のボルシチを流し込む。ボルシチには、カッテージチーズケーキ([レシピ]358番)、肉入り丸パン([レシピ]353番)、またはキノコ入り、または牛肉入りの丸パン([レシピ] 351・352番)、または蕎麦の穀粒から作ったクルトン等々を添えて食卓に出す。[召使に食材を]渡す: さまざまな[=直訳]牛肉3フント[1228.5g] 豚肉・ハム・ウィンナソーセージ [香味野菜の]基本的な[=直訳]根1束 ナガネギおよび свекольник(ビートの葉と茎)を含む香味野菜の葉1束 発酵または生のキャベツ1/2フント[約205g] ビート1フント[409.5g] クワス 小麦粉1/2カップ サワークリーム1/2カップ オールスパイス5〜10粒・ローリエ1〜2枚 トマト2〜3個 豆1/4カップ[レシピ本文:シロインゲンマメ1/4フント] およびジャガイモ6個 ディル
小麦粉の代わりに、切り刻んだパセリ[大]匙1/2とセロリ[大]匙1/2、鶏卵半分ほどの大きさの新鮮な豚脂1切れ、黍1/4カップを用意して、これらすべてをすり砕き、ボルシチを調味する。([40] 126−127頁)
(7) アレクサンドロヴァ=イグナーチエヴァの料理書 ⇨ 各項目: (1) (2) (3) (4) (5) (6) 註 参考文献 戻る
モロホヴェツが名声を博していた時代の後半に、明らかにこの料理書とは一線を画するかたちで、言い換えれば先行文献の長所(例:幅広いメニュー)を活かしつつ、レシピ数の多さを競うのではなく、特定のテーマ(例:畜肉の部位)に絞って詳しく解説する実用書が現れた。著者の名は П.П. Александрова-Игнатьева(以下「アレクサンドロヴァ=イグナーチエヴァ」と記す)。彼女の辿った数奇な運命については、前掲の Сюткины が詳しく述べている([5] 205−227頁、[41] 416−429頁)。モロホヴェツとは発行部数が桁違いに少ないとはいえ、アレクサンドロヴァ=イグナーチエヴァの料理書は、今日でも新正字法への書き換え版が出回っており、少なからぬ人気を保っていると言えよう。
それでは、『調理技術の実践基礎 料理学校用および独習用の手引き』と題する彼女の著作のうち、ウクライナ風ボルシチの2種類のレシピを紹介しよう。拙論の筆者は、同上書の初版1899年と第10版1914年、いずれも原本のレシピを比較したうえで、大幅な改訂が見られる第10版のテキスト([42] 183−188頁)を引用する。
図18・図19 省略 ⇒ PDF文書 参照
【レシピ14】(図18)(下線部=原文のまま、網かけ=原文の誤植) ⇨ レシピ: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 15 戻る
Борщ малороссийский.Мяса − 2 1/2 ф. Кореньев − 5/8 ф. Свёклы − 1 1/4 ф. Капусты свеж. − 5/8 ф. Муки − 2 стол. ложки. Масла столов. − 1/4 ф. Соли, перцу Лавр. листу } по вкусу. Воды − 8 глуб. тар. Помидоров − 5 шт. или 1/4 ф. томату-пюре. Ветчины косточку − 1/2 ф. Шпеку свин. − 1/4 ф. Сметаны − 3/8 ф. или 5 стол. лож. <...>
Малороссийский борщ, как его принято приготовлять в Петербурге.
Правила приготовления. Разрезав мясо грудинку на порционные куски так, чтобы каждый кусок был с косточкой, поставить вариться белый бульон. После снятия пены прибавить в бульон соль и букет. Свёклу и коренья очистить от кожицы и тонко нашинковать. Затем спассеровать в отдельной глубокой посуде на отколерованном масле мелко нашинкованный лук, прибавить к нему нарезанную свёклу. Если масла в спассерованном луке окажется слишком мало, то следует прибавить ещё кусочек. Дав свёкле немного спассероваться (не закрывать посуду крышкой), прибавить к ней коренья (репа, морковь и сельдерей) и влить немного бульона. Когда коренья прожарятся до полной готовности, прибавить обланжиренную и тонко нашинкованную свежую капусту и, когда последняя несколько спассеруется, всыпать пшеничную муку (заменяющую отдельно приготовленную пассеровку), затем прожарить ещё немного. За 1 или 1 1/2 часа до подачи к столу, когда все заправочные продукты дойдут до полной готовности, процедить в них бульон, обмыть бульонное мясо горячей водой и опустить его тоже в суп и, не закрывая кастрюлю крышкой, варить борщ на медленном огне. В это же время следует прибавить в борщ обланжиренную косточку ветчины, несколько зёрен английского перцу и (図18)лаврового листа. За 1/2[分数]часа до обеда опустить туда же нарезанные ломтиками помидоры. За 10 минут до подачи к столу можно опустить в борщ отдельно отваренные белые бобы фасоль, затем, сняв весь лишний жир, заправить борщ изрубленным свиным шпеком и сметаной.
Перед самой подачей на стол вливают в борщ подкраску, которая приготовляется так: натерев на тёрке очищенную от кожицы красную сырую свёклу, залить её бульоном; дать настояться 15−20 минут. Затем поставить кастрюлю с подкраской на плиту и, не закрывая крышкой, вскипятить несколько раз, потом процедить через сито и полученный отвар вылить в борщ.
За полчаса[分数ではない]до подачи на стол можно ещё прибавить в борщ зажаренную и разрезанную на порционные куски утку, которая придаёт борщу очень приятный вкус. Также можно прибавить ломтики очищенных кислых яблок и утушённый отдельно картофель, нарезанный чесночком. Картофель прибавляется перед подачею, потому что, положенный заранее, может развариться и потерять форму.
Объяснения и примечания.
Мясо. Для борща необходимо брать грудинку, как сорт наиболее отвечающий требованиям хорошего борща. Борщ должен быть 1) наварист, 2) жирен и 3) содержать хорошую порцию супового мяса. Грудинка заключает в себе губчатые кости с большим количеством красного мозга, дающего хороший навар. Как всякое мясо, предназначенное для варки супа, грудинку следует разрубить на небольшие куски; кроме того, следует соблюдать это правило в данном случае для того, чтобы кости грудинки были раздроблены, через что сок их мог бы перейти в навар.
Свёкла. Для малороссийского борща нужно пассеровать свёклу на брезе или на масле, а не отваривать в воде, так как в последнем случае она теряет цвет и отдаёт часть своего вкуса воде; в спассерованном виде она сохраняет и цвет и вкус. Для сохранения цвета свёклу надо пассеровать в открытой посуде.
Ветчина. Косточку копчёной ветчины, прибавляемую к малороссийскому борщу, необходимо предварительно обланжирить для того, чтобы легче было счистить с неё покрывающую её копоть. Ветчину можно разрезать на порционные куски перед варкой, но можно это сделать и перед самой подачей борща на стол.
Помидоры. Помидоры составляют необходимую принадлежность малороссийского борща. Из них необходимо предварительно вынуть семена, так как иногда последние придают борщу горький вкус. Помидоры следует опускать в борщ по крайней мере за 1/2 [分数] часа до подачи к столу, иначе они не успеют развариться и передать свой вкус борщу. Помидоры придают борщу приятный кисловатый привкус. Зимою, когда нет свежих помидоров, можно брать солёные или пюре томат[-]консервы, которое прибавляется в то время, когда прожаривается свёкла.
Свиной шпек. Для заправки следует мелко изрубить свиной шпек ножом на доске, затем, смешав его в чашке с хорошей сметаной, развести немного борщом. Влив заправку в борщ, следует прокипятить его. Свиной шпек так же, как и свежие помидоры, составляет необходимую принадлежность малороссийского борща, каким бы способом его ни готовили, великорусским или чисто малороссийским. Шпек берётся свежий или солёный, но только не копчёный. После прибавки шпека борщ не следует долго кипятить, потому что тогда он получает запах сала.
Подкраска. Ввиду того, что свёкла варится в борще долгое время (иначе она не передаст своего вкуса) и оттого теряет свой цвет, перед подачей к столу борщ необходимо подкрасить.
Варить подкраску следует в эмалированной или какой-нибудь другой нелужёной посуде; от лужёной посуды навар получает синеватый цвет и, кроме того, изменяет свой вкус. Подкраску необходимо процедить, чтобы в борщ не попала протёртая свёкла.
Многие подкрашивают борщ сырой потёртой свёклой, но этого делать не следует, так как сырая свёкла передаёт борщу вкус сырости.
Уксус. В малороссийский борщ обыкновенно не принято прибавлять уксус, в особенности, если борщ приготовляется на суровце и кладётся достаточное количество помидоров.
Капуста. Если любят кисловатый борщ, то вместо свежей можно брать шинкованную квашенную[正 квашеную]капусту.
ウクライナ風ボルシチ[5人分の食材表]
[牛]肉21/2フント[約1024g] [香味野菜の]根5/8フント[約256g] ビート11/4フント[約512g] 生キャベツ5/8フント[約256g] 小麦粉 大匙2 食用油1/4フント[約102g] 塩・胡椒・ローリエ(好みで) 水 深皿(31)8 トマト5個またはトマトピューレ1/4フント[約102g] ハムの骨1/2フント[約205g] 豚脂1/4フント[約102g] サワークリーム 3/8フント[約102g]または大匙5([42] 183頁)
〔ボルシチに添えるコテージチーズケーキ、ゆでた鶏肉 ご飯付き、ベリー類のゼリー:食材表 省略〕ウクライナ風ボルシチ [サンクト]ペテルブルグではどのように作っているか
調理法 [牛]バラ肉を、それぞれ肉片に骨が付くように、人数分に切って[5人であれば5等分する]、白いブイヨンを作る。灰汁を取ってから塩とブーケガルニを加える。ビートと[香味野菜の]根の皮をむき、細かく切り刻む。そして[ブイヨンとは]別の深鍋の中にバターオイル(32)を入れ、みじん切りのタマネギを炒める。そこへ刻んだビートも加える。炒めたタマネギにバターが少ないときは、もう少し付け足せばよい。ビートがややしんなりしてきたら(鍋に蓋をしないこと)、[香味野菜の]根(カブ、ニンジン、セロリ)を入れ、ブイヨンも少々注ぐ。根に充分火が通ったあと、ゆがいて細かく切り刻んだ生キャベツを加えて、それ[=生キャベツ]がいくぶんしんなりしてきたら、小麦粉を振りかけて(作り置きの炒り小麦粉の代わりに)[レシピ17・20参照]、さらに炒める。食卓に出す60〜90分前に、できあがった調味野菜の中へブイヨンを濾して入れ、煮出し用の肉を熱湯で洗い、肉もスープに投じる。鍋に蓋をしないまま、ボルシチを弱火で煮込む。この[煮込みの]あいだ、ゆがいたハムの骨、オールスパイス数粒、ローリエを加えるべきである。昼食の30分前に、トマトの薄切りを鍋に入れる。食卓に出す10分前には、別の鍋で煮たシロインゲンマメをボルシチに投じてもよい。そのあと、余分な脂をすべて取り除き、切り刻んだ豚脂とサワークリームでボルシチの味を調える。
食卓に出す直前には、ボルシチに着色料を入れる。作りかたは次のとおり:皮をむいた赤い生ビートを下ろし器ですり下ろし、そこにブイヨンを注ぐ。15〜20分置いてなじませる。そのあと、この着色料を入れた鍋を火にかけて、蓋をしないで数回沸騰させ、濾し器に通してから、その煮汁をボルシチに注ぎ入れる。
食卓に出す30分前には、焼いて人数分に切った家鴨の肉片を、ボルシチに加えてもよい。すばらしい風味がボルシチに付く。また皮をむいた酸っぱいリンゴの薄切りや、別の鍋でじっくり煮込み、くし形に切ったジャガイモ(33)を加えてもよい。ジャガイモは直前に入れること、さもないと煮過ぎて形が崩れてしまう。写真1・写真2・写真3 省略 ⇒ PDF文書 参照
説明と註釈
[牛]肉(写真1−3) ボルシチには必ずバラ肉を使う。おいしいボルシチの条件を最もよく満たす部位だからである。ボルシチは、1) 濃厚な味わいがあり、2) 脂っこく、3) スープ用の肉が惜しみなく入っている、[以上の3点]が求められる。バラ肉には、良い出汁の素となる赤色骨髄をたっぷり含む、海綿骨が付いている。スープ煮出し用のすべての肉と同じく、バラ肉は小さく切り分けること。さらに言えば、骨は打ち砕いたほうが、[骨髄の]液が出やすくなるため、この [スープを煮る]場合の調理法を守ってもらいたい。
ビート ウクライナ風ボルシチには、ビートを水煮せず、浮き脂(34)またはバター[オイル]で炒める必要がある。なぜなら、水煮の場合は色を失い、うまみの一部が溶け出してしまうからである。炒める場合は、色もうまみも保たれる。色を保つために、ビートは蓋をしないで炒めること。
ハム ウクライナ風ボルシチに加える燻製ハムの骨は、回りに付着した煤を取り除きやすくなるように、あらかじめ湯通しする必要がある。ハムは煮込むまえに、人数分の小片に切っておく。この作業はボルシチを食卓に出す直前でもよい。
トマト トマトはウクライナ風ボルシチに不可欠な食材である。あらかじめ種を取り除いておかねばならない、なぜなら種がボルシチに苦みを付けるかもしれないから。少なくとも食卓に提供する30分前までに、トマトをボルシチに投入すること。さもないと煮て軟らかくなったトマト独自の味がボルシチに伝わらなくなる。それはさわやかで少し酸っぱさのある後味をボルシチにもたらす。生トマトが出回らない冬には、塩漬け・またはピューレの缶詰を、ビートによく熱が通ったときに加える。
豚脂 調味料としての豚脂は、まな板に載せ、包丁で細かく切り刻み、小鉢に移したあと良質のサワークリームとよく混ぜて、ボルシチ[の一部]と少し合わせて薄めること。この調味料をボルシチに入れて、煮立たせる。豚脂は、ロシア式の、または[後述の]純ウクライナ式のいずれかで調理するにせよ、生トマトと同じく、ウクライナ風ボルシチにとって必須の食材である。豚脂は生または塩漬けを用い、燻製は避けること。この調味料を加えたあと、ボルシチを長く煮てはいけない、煮過ぎると豚脂の香りが[強く] 付いてしまう。
着色料 ボルシチを作るさい、ビートは長い時間をかけて煮込む(そうしないとビート独自の味が出てこない)。それゆえ色褪せが起きやすいので、食卓に出すまえに、ボルシチを少し着色しなければならない。
着色料は、ほうろう引きの、または錫メッキ以外の鍋を用いて作る。錫メッキの鍋を使うと、煮汁が青みを帯び、さらに味も変わってしまう。着色料は必ず濾すこと、すり下ろしたビート [の滓] がボルシチに混ざらないために。
多くの人はすり下ろしたままの生ビートでボルシチを着色しているが、このやりかたは良くない。なぜなら生ビートはボルシチに生臭い味をもたらすからである。[拙論102頁参照]
酢 ウクライナ風ボルシチにはふつう酢を加えない決まりがある。とりわけ、ふすま製クワス(35)[次のレシピ15「ふすま製クワスの作りかた」参照] を入れ、トマトをたっぷり投じてボルシチが作られるときには。
キャベツ やや酸っぱいボルシチが好まれる場合、生キャベツの代わりに、細かく刻んだ発酵キャベツを入れてもよい。([42] 184−187頁)
【レシピ15】(図30)(下線部=原文のまま、網かけ=原文の誤植) ⇨ レシピ: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 戻る
Малороссийский борщ, как его варят в Малороссии.
Пропорция необходимых продуктов на 5 чел.
Гуся или утку − 1 шт. Мяса грудины − 1 1/2 ф. или баранины, или свинины. Бураков квашенных [正 квашеных]− 1 1/2 ф. Кореньев − 1/2 ф. Луку − 1 шт. Помидоров свежих 10 шт. Суровца − по вкусу. Свиной копчёной грудинки − 5/8 ф. Шпеку свиного − 1/2 ф. Пшена − 3 столовых ложки. Соли − по вкусу. Воды для бульона [− 欠] 5 тар.Правила приготовления. Сложить в горшок или кастрюлю: нарезанные порционные куски сырого мяса говядины или баранины, кусок копчёного гуся, копчёную свиную грудинку, квашеные [原文 н1字] бураки (свёкла) вместе с соком (квасом), очищенные и нарезанные ломтями белые коренья (сельдерей, порей, петрушка), очищенный, нарезанный сырой лук и, наконец, свежие или солёные помидоры, очищенные от семян. Всё это залить холодной водой, прибавив по вкусу суровца, закрыть крышкой и поставить в русскую или духовую печь. Когда появится пена, то снять её, посолить и варить борщ 3−4 часа. Перед подачей заправить толчёным пшеном со свиным шпеком, но предварительно пшено нужно ошпарить кипятком, потом сложить в ступку, положить туда свиного шпеку (малороссийского сала) и всё хорошенько протолочь. Перед подачей к столу положить эту заправку в борщ и вскипятить один раз; можно еще прибавить сметаны и тёртого чесноку.(図19)
Приготовление суровца. Выпарить обыкновенную кадку <...>. Когда кадка приготовлена, положить в неё пшеничных отрубей не менее 10 ф. (если меньше, то получится очень малое количество суровца), залить их кипятком в таком количестве, чтобы были покрыты, накрыть кадку крышкой и поставить её в тёплом месте до тех пор, пока отруби осядут на дно, а сок поднимется кверху, что может пройзоити дня через 3 или 4. Сцедить этот сок (квас), не давая стоять дольше с отрубями, иначе он прогоркнет, и употреблять для борща. Ввиду того, что суровец имеет резкий кислый вкус, в особенности, если он давнего приготовления, то при прибавке его в борщ всегда нужно руководствоваться вкусом.
Приготовление квашенных[正 квашеных]бураков. Взять хорошие красные бураки (свёклу), очистить их от кожи, нарезать тонкими ломтиками, залить кипячёной водой в таком количестве, чтобы были вполне ею покрыты, закрыть и поставить в погребе на 2 недели. Если желают приготовить свекольный квас более скорым способом, то очищенную сырую свёклу нужно натереть на тёрке, залить кипячёной водой и поставить в тёплое место. Такой квас поспевает через 3−4 дня.
Свекольный квас. Если свекольный квас приготовлен из тёртой свёклы, то в борщ кладётся отдельно испечёная и очищенная свёкла, нарезанная ломтиками, и только свекольный процеженный квас, тёртая же свёкла не кладётся.
Общее примечание. Каждая губерния варит малороссийский борщ на свой лад; разница встречается в деталях приготовления, но основные правила почти везде одни и те же. В некоторых местностях свёклу варят, и этот отвар прибавляют в борщ.
ウクライナ風ボルシチ ウクライナではどのように作っているか
5人分の必須食材表
鵞鳥または家鴨1羽 牛バラ肉11/2フント [約614g]、または [同量の] 羊肉、または豚肉 発酵ビート11/2フント [約614g] [香味野菜の] 根1/2フント [約205g] タマネギ1個 生トマト10個 ふすま製クワス(好みで) 燻製豚バラ肉5/8フント [約256g] 豚脂1/2フント [約205g] 黍 大匙2 塩(好みで) ブイヨン用の水 深皿5調理法 壺または鍋に入れるもの:人数分に切った生の牛肉または豚肉、燻製鵞鳥の小片、燻製豚バラ肉、発酵ビート(漬け汁を含む)、皮をむいて薄く切った(セロリ・リーキ・パセリの)白い根、皮をむいて切り刻んだタマネギ、そして最後に、種を抜いた、生または塩漬けのトマト。これらすべてに、好みでふすま製クワスを加えてから冷水を注ぎ、蓋をして、ロシア式暖炉またはオーブンに入れる [原文: поставить в русскую или духовую печь]。灰汁が出れば取り除き、塩を振り、3〜4時間煮込む。提供するまえに、豚脂を混ぜてすり潰した黍で味を調える。黍はあらかじめ熱湯をかけてから臼に投じ、豚脂(ウクライナ風豚脂)を加えて完全にすり潰す。食卓に出すまえに、この調味料をボルシチに入れてひと煮立ちする。さらにサワークリームやすり下ろしたニンニクを足してもよい。
ふすま製クワスの作りかた ふつうの桶〔中略〕を蒸気・熱湯消毒する。この作業が終わったら、小麦のふすま10フント [4095g] 以上を桶の中に入れる(それ以下の分量では、ふすま製クワスがほんの僅かしか作れない)。[ふすまが] 浸るくらいに熱湯を注ぎ、蓋をして、暖かい所に置く。3〜4日すれば、ふすまが底に沈み、[発酵により] 液汁が膨れてくるだろう。この状態がさらに続くと変敗するため、液汁(クワス)を濾過して、ボルシチの調味料とする。ふすま製クワスは、とくに作ってから日数の経ったものは、強烈な酸味を持つ。それゆえボルシチの味を調えるさい、入れ過ぎないよう細心の注意を払うこと。
発酵ビートの作りかた 良質の赤ビートを選んで、皮をむき、薄く切り刻み、全体が浸るくらいに熱湯を注ぎ入れ、蓋をして、地下貯蔵庫に2週間寝かせる。もし [発酵ビートから得られる] ビート製クワスをもっと早く作りたいときは、皮をむいた生ビートを下ろし器ですり下ろし、熱湯を注いで暖かい所に置く。そうすれば3〜4日後にクワスが熟成する。
ビート製クワス もしすり下ろしたビートから作ったクワスがある場合は、[皮付きのままオーブンで] 個別に焼いて皮をむき、薄く切り刻んだビート、および濾したビート製クワスだけをボルシチに入れる。すり下ろしたビートは加えない。
全般的な註釈 各県ではそれぞれのやりかたでウクライナ風ボルシチを作っている。その調理法は細かい点では異なるものの、基本的な作りかたはどこでもほぼ変わらない。ある地方ではビートをゆでて、その煮汁をボルシチに加えている。([42] 187−188頁)
拙論の第U章(17頁)で筆者は、「ビート製クワスをもとに作るボルシチは、いまでも旧来の調理法として、多くのロシア料理書の中で継承されている」と述べた。この「旧来の調理法」、すなわちビート製クワスを用いる方法は、第Y章で紹介した、いくつかの「古いレシピ」が推奨するものである。ビート製クワスは、ボルシチに @ 色を付ける、A 酸味を加える、という2つの重要な役割を持っている。アメリカの料理研究家 D. Goldstein によれば、「ビート製クワスはボルシチにとって格別に風味豊かなベースとなる」([43] 22頁)。ところがボルシチの発祥地とされるウクライナにおいて、伝統的なクワスに関する事情が少し変わってきたようである。第X章でも引用した文献には、次のように書かれている:
ボルシチには、甘みが強いものや酸味が強いものもある。伝統的には、クワス(P.21)という発酵飲料によって酸味が加えられる。クワスはもともとは野草から作られていたが、のちにビーツやライ麦パンから作られるようになった。トマトが普及すると、手に入りやすくて使い勝手がよいことから、クワスの代わりにボルシチの酸味づけに使われるようになった。(X[17] 45頁)
「手に入りやすくて使い勝手がよい」とは、つまり手間暇をかけず、上記のレシピ15のように、「地下貯蔵庫に2週間寝かせ」たり、もっと早く「3〜4日」で熟成させたりする必要がない、ということであろう。このように時代の状況に応じて、あるメニューで用いる食材もAからBに入れ替わることは、すでに第X章で述べたとおりである(例:ハナウド⇒ビート、カブ⇒ジャガイモ)。
前掲の文献には、さらに次のようなくだりがある:
ほんの数十年前まで、発酵ビーツは多くの料理に利用されていた。ビーツのクワスは有名な国民的煮込み料理のボルシチをはじめ、多くの肉料理に積極的に使われた。発酵ビーツやビーツのクワスは今もボルシチに使われてはいるが、ごく少数派にとどまっている。(X[17] 21頁)
その理由として、同上書は「クワスの工業製品化」を挙げている:
伝統的な微炭酸飲料のクワスは、かつては穀類や野菜を無殺菌発酵させて作られていたが、そのまま飲むだけでなく、料理の食材としても利用されてきた。とくにビーツのクワスとライ麦パンのクワス(シリヴェッツという)の人気はとても高かった。現在、クワスは工業製品化され、20世紀になると自然発酵による自家製クワスはほぼ壊滅状態に陥った。(同 21頁)
けれども自家製クワスを再興させる動きもあるという:
ところが近年、料理ブロガー、料理研究家、料理愛好家、プロの料理人の間で、ビーツのクワスに関心を示す人たちが増えつつあり、自家製にチャレンジする向きも現れはじめている。(同 21頁)
ウクライナ出身のオリガ・ホメンコによるボルシチの説明も、「自家製にチャレンジする」例のひとつかもしれない:
例えばキエフ風ボルシチは、最初にビーツを発酵させて、ビーツのクワス(酸汁)を作る。それをベースにして、肉と炒めた野菜を煮込み、仕上げに刻んだリンゴのピクルス、豚のラード、ローレル(月桂樹)などを加える。(T[17](a) 230頁)
同じくウクライナ出身のハーキュリーズは、ボルシチに「酸味を加える大切な材料」(T[22] 116頁)として、手作りのビート製クワスの作りかた(同 68頁)、およびそれを用いたボルシチのレシピ2種を紹介している(同 126頁・132頁)。ただし「ウクライナの田舎」では「発酵に適したバクテリアやイースト菌が存在」するのに対して、「都会では、化学物質や汚染物質によって良いバクテリアの成長が阻まれ」るために、都会の条件に合うアレンジレシピを紹介したと述べている(同 25頁)。
〔第Y章 註〕 ⇨ 各項目: (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) 参考文献 戻る
| (1) | タマネギとニンニクは、かつてロシアでは非常に好まれ、口臭の主な原因となっていた(拙論53頁 註(36)参照)。 |
|---|---|
| (2) |
リョーフシン編集の料理事典(1795〜1797年)の発行年、巻数と頁数について、Сюткины は「1795〜1796年または1795〜1797年、全10巻、1500頁以上」([5] 11頁・39頁・285頁)、あるいは「1795〜1798年」(W[43] 24頁、[53] 6頁)とする。これに対して В.В. Похлёбкин は、「1795〜1797年、全6巻、各巻平均460頁」、つまり総頁数2760とする([52] 3−4頁、[53] 6頁)。両者の記述は大きく異なっているが、インターネットで公開されているロシア国民図書館(РНБ)の電子目録や、拙論の筆者が入手した復刻版([7])を見る限りでは、В.В. Похлёбкин の書誌情報のほうが正確である。ちなみにこの復刻版によれば、料理事典は1795〜1797年発行、全6巻、総頁数2746(目次・図版を除く)。したがって Сюткины の書誌情報は正しくない。 |
| (3) | この主張は、リョーフシン『ロシアの台所』出版200周年(1816〜2016年)記念の校訂本([1] 398頁)に載っている。М. Марусенков の解題によれば、『ロシアの台所』はレシピ集と食料保存の2部に分かれ、料理事典第5巻40−90頁(1796年)には前半のレシピ集のみが収められた。拙論の筆者は、同上書の復刻版([7])を参照して、この書誌情報が正しいことを確認した。それゆえ外国料理の翻訳書としての料理事典の中に、『ロシアの台所』の前半が含まれるという意味において、同上書第5巻は「ロシア料理〔中略〕に特化した」単行本には当てはまらない。これが М. Марусенков の主な論拠である。なお、同上書第5巻は『ロシアの台所』全編(前半・後半)を含むとする Сюткины の記述([5] 43頁)は誤り。 |
| (4) | リョーフシン『ロシアの台所』校訂本([1] 401頁)によれば、この序文は料理事典に初めて所収。 |
| (5) |
当時の出版事情を考慮すれば、モスクワの南方にあるトゥーラ県在住の貴族リョーフシンが、これらの先行文献を知らなかっただけかもしれない。しかし校訂本の中で М. Марусенков は、リョーフシンが同時代の先行文献の一部を自著に「引用した」(つまりそれらの存在を彼は知っていたことになる!)と述べたうえで、この箇所について、『家庭訓』を始めとする16〜17世紀の料理関連書が、リョーフシン(1826年没)の生前には出版されなかったことを指している、と解釈する([1] 401頁)。たしかに16〜17世紀の関連書、たとえば『家庭訓』は印刷物として1849年に初めて公刊された(同 401頁)。つまりリョーフシンは、同時代の先行文献もすべて含めたうえで、それら以前には料理を記録する例がなかったと指摘している、と見なすわけである。 |
| (6) | 後半の「ロシア料理は芸術ではなく、伝統や習慣に基づいている.....」以下の文章は、19世紀ロシアの歴史学者 Н.И. Костомаров の著作(W[80] 81頁)から А.В. Сергеева が引用したものだが、出典は明記されていない。また原文の過去形「基づいていた」(同 81頁)は、引用文では現在形「基づいている」に書き換えられた。 |
| (7) | 聖書の思想によれば、「食べ物は神からの贈り物」([15] 15頁)であり、「祝福のしるし」である(同 23頁)。したがって人間の「食べる行為」は神からの恵みとして祝福されたものであり、決して低俗な、卑しむべきものではない。それゆえ広義の「禁欲」が食事制限のかたちでなされる「断食」、つまり「宗教的理由に基づく飲食の部分的ないし全面的停止」([16] 743頁)は、信仰者が自発的に、かつ人知れずに行なう場合に限り、上述の聖書の思想から逸脱するものではない。聖書の中に断食の記述はいくつも見られる。しかしそれがいつのまにか制度化されると、本来の趣旨から離れて形骸化してしまう恐れがあり、そのことは聖書の中でたびたび警告されている。 |
| (8) | ロシア国立図書館(РГБ)の公式サイトでは、『料理雑記』の全頁が画像として公開され、自由に閲覧・ダウンロードできる:https://dlib.rsl.ru/viewer/01003335612#?page=11(参照:2025.6.1) |
| (9) | この箇所は коренья, петрушки のコンマ( , )を誤植と見なして取り除き、коренья петрушки「パセリの根」と解釈した。「パセリ」単数主格 петрушка、単数生格 петрушки、複数主格 петрушки(単数生格と同じ語尾)。ここでは単数生格 петрушки「パセリの」。 |
| (10) | С.В. Друковцoв『貴族、農民、料理人、女性料理人のための経営指南』([46] 第2版1773年、59頁、ロシア国民図書館所蔵)によれば、「赤いブイヨン」の食材は、野鳥・牛肉・カブ・ビート・ニンジンその他。なお同上書にはボルシチのレシピは含まれていない。 |
| (11) | 同上書の復刻版([11])の底本は、1794年発行、ただし版数不明。ロシア国民図書館(РНБ)の電子目録によれば、同上書の第2版は1793年発行。したがって1794年=第3版と推定した。 |
| (12) | 原語は бураков(бураки の複数生格、「料理用ビート」)。ここでは校訂本([1] 49頁)および書き換え版([14] 193頁)の解釈に従い、「発酵ビート」と訳した。 |
| (13) | 原語は по большой части。ここでは形容詞比較級 больший の表現 по большей части「大部分は・主に」と解釈した。 |
| (14) | フント:原語 фунт、ロシアの古い重量単位。(1) 薬局用フント=358.3g、(2) 商業用フント=409.5g(『岩波ロシア語辞典』2110頁)。ラテン語由来のロシア語 рецепт には「処方箋」と「料理用レシピ」の2通りの意味があって、料理書を読むときは、(2)の商業用フント409.5gに換算する。ただし現代ロシアにおいて、ロシア帝国時代の料理書を新正字法・新度量衡への書き換え版として発行するさいに、1フント=400gに切り捨てて換算することが広く行なわれているので、注意されたい。 |
| (15) | ティーカップ:原語 чайная чашка、ここでは家庭にある紅茶用カップを指す。後述の液量単位のカップ(註(23)参照)とは異なる。ちなみにロシア製の伝統的なティーカップの容量は約250㎖。 |
| (16) | 詳しくは拙論「エレーナ・モロホヴェツ『若い主婦への贈り物』―あるロシア料理書の系譜― (4)」(釧路公立大学紀要『人文・自然科学研究』第25号60−61頁)を参照されたい。 |
| (17) | アヴヂェーエヴァは『料理ポケットブック』([21])において、сарацинское пшено(米)を пшено(黍の碾き割り)に訂正したと考えられる。彼女は前作『ロシアの経験豊かな主婦のハンドブック』([23])の中で、同じ意味の просо(黍)を用いている(レシピ7参照)。 |
| (18) | アヴヂェーエヴァの伝記資料([47] 31頁)には、『料理の秘訣』([24])は「贋作」と明記されている。 |
| (19) | 詳しくは拙論「エレーナ・モロホヴェツ『若い主婦への贈り物』―あるロシア料理書の系譜― (3)」(釧路公立大学紀要『人文・自然科学研究』第23号96−97頁)を参照されたい。 |
| (20) | 筆者が参照した復刻版([26])には、発行年を特定できる数字がどこにも見当たらない。ロシア国民図書館(РНБ)の電子目録に基づき、第5版の発行年を「1912年」とした。 |
| (21) |
たとえば下記の図書を挙げておく。いずれも新正字法に基づく書き換え版である。 |
| (22) |
クワス:原語 кислые щи「酸っぱいキャベツ汁」、ここでは古い意味の「(ビート製)クワス」。 |
| (23) |
カップ:原語 стакан「取っ手のないコップ」、現行の液量単位。ただし @ 2通りの解釈(二重基準)があること、A 日常よく使う料理用語であるにもかかわらず、既存のロシア語辞典には液量単位としての語義が記されていないこと、に注意されたい。一般的には、1カップ= (1) 200㎖、(2) 250㎖ のいずれかに解釈できる。この二重基準は現代ロシアでも存続しており、料理書にカップの定義が記されていない場合、すぐに判断できないこともある。大まかに見て、(1) カットグラス гранёный стакан1杯=約200㎖、(2) 金属製ホルダー(подстаканник)付きの耐熱ガラスコップ тонкий стакан(直訳「細いコップ」)1杯=約250㎖、と換算できる。前者の利点は丈夫で長持ちすること、後者の欠点は割れやすいことである。それゆえロシアの一般家庭では、金属製ホルダーは先祖から伝わっていても、その中のガラスコップは失われていることが多い。 |
| (24) | 詳しくは拙論「エレーナ・モロホヴェツ『若い主婦への贈り物』―あるロシア料理書の系譜― (4)」(釧路公立大学紀要『人文・自然科学研究』第25号75−76頁)を参照されたい。 |
| (25) | 同上書([38])の扉の表記:Перевод с шестого польского издания「ポーランド[語]第6版からの翻訳」。 |
| (26) |
たとえば下記の図書を参照されたい。 |
| (27) | 「白いブイヨン」とは、モロホヴェツの同上書([40] 122頁)「シチー」の註1)によれば、肉・塩・ブーケガルニだけを入れて煮込み、濾したブイヨンのことである。 |
| (28) | 原語 солдатский хлеб「兵士のパン」。ロシア帝国陸軍の糧食として定められ、ライ麦サワー種を用いた植物性乳酸発酵による、ライ麦100%のパン。ロシアの伝統に従えば、「パン」とはすなわち「黒パン(ライ麦パン)」のことであった。 |
| (29) | クワス用ボトルと同じであると解釈すれば、1ボトル=0.615ℓ、3ボトル=1.845ℓとなる(前頁 註(22)「ボトル」参照)。 |
| (30) | 「夏用ペチカ」:ここでは簡易な構造のペチカを指すものと考えられる(拙論75頁 註(24)参照)。 |
| (31) | 原語 глубокая тарелка「深皿・スープ皿」。液量単位の「深皿」1枚=1.5カップ(1カップ205㎖)とすれば、その容量は深皿1=307.5㎖となる(註(23)参照)。 |
| (32) | 原語 отколерованное масло「変色したバター」。アレクサンドロヴァ=イグナーチエヴァ独自の用語で、топлёное масло「バターオイル」を指すものと考えられる。モロホヴェツの料理書では русское масло「ロシアのバター」(『贈り物』最終第29版、レシピ番号3643)。バターオイルは、乳脂肪分99%以上の製品が固形の状態で市販されている。なお、растопленное масло「溶かしバター」と混同しないこと。 |
| (33) | 原語 картофель, нарезанный чесночком 直訳「ニンニク(ひとかけ)の形に切った」。ここでは чесночком を дольками「くし形に」と解釈した。 |
| (34) | 原語 брез「ブイヨンから取った脂」(拙論128頁 註(10)参照)。 |
| (35) | 原語の綴り:суровец(В.И. Даль 編ロシア語詳解辞典の綴りとアクセント:суровец / суровец / сыров / сыровец)。сыровец「⦅方⦆ 熱処理されていないクワス」(『岩波ロシア語辞典』1925頁)。ここではアレクサンドロヴァ=イグナーチエヴァの製法解説に基づいて、「ふすま製クワス」と訳した。「ふすま」は小麦粉を作るときの副産物で、家畜の飼料となる。現代の料理書における別の表現:квас-сыровец(U[1] 62頁)、квас-сировец(V[3] 67頁)。ただし原料はふすまではなく、ライ麦パン(U[1] 62頁)またはライ麦粉(V[3] 67頁)。 |
〔第Y章 参考文献〕 ⇨ 各項目: (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) 註 戻る
☞ ロシア帝国時代の文献の書名は、すべて新正字法に基づいて書き換えた。
| [1] | Лёвшин В.А. Русская поварня − 200 лет спустя. Юбилейное издание. М., 2016. |
|---|---|
| [2] | バーバラ・ウィートン『味覚の歴史 フランスの食文化−中世から革命まで』辻 美樹訳(大修館書店、1991年)。 |
| [3] | Головкин Б.Н. Исконно русская кухня. Рецепты, обычаи, традиции. М., 2007. |
| [4] | エドモン・ネランク、ジャン=ピエール・プーラン『よくわかるフランス料理の歴史』藤井達巳・藤原 節訳(同朋舎、2000年)。 |
| [5] | Сюткина О.А., Сюткин П.П. Русская и советская кухня в лицах: непридуманная история. М., 2016. |
| [6] | Аношин А.В., Михайлов В.С. Русские блюда на нашем столе. Краснодар, 1990. |
| [7] | Лёвшин В.А. Словарь поваренный, приспешничий, кондитерский и дистилляторский. Ч. 1−6. М., 1795−1797.〔復刻版〕 |
| [8] | Сергеева А.В. Русские. Стереотипы поведения, традиции, ментальность. М., 2004. |
| [9] |
玉村豊男『料理の四面体』(鎌倉書房、1980年)。 |
| [10] | Друковцов [Друковцев] С.В. Поваренные записки. М., 1779. |
| [11] | Осипов Н.П. Старинная русская хозяйка, ключница и стряпуха. СПб, 1794.〔復刻版〕 |
| [12] | Лёвшин В.А. Русская поварня. М., 1816. ☞ ロシア国民図書館(РНБ)所蔵の原本は、≪Повар королевский, или новая поварня, приспешная и кондитерская для всех состояний≫ 第3巻との合冊本となっている。 |
| [13] | Лёвшин В.А. Русская поварня. М., 1816.〔復刻版〕 |
| [14] | Лёвшин В.А. Русская поварня. М.: Э, 2017.〔書き換え版〕 |
| [15] | Андреев М. Новая и полная для всех состояний ручная кухмистерская книга, или опытный повар, кухмистер и кондитер. М., 1837. |
| [16] | Ручная книга в кухне и погребе для русской хозяйки.М., 1854.〔復刻版〕 |
| [17] | Г. [Гросс] Н.В. Новейшая поваренная книга. Ч. 1−2. М., 1865.〔復刻版〕 |
| [18] | Г. [Гросс] Н.В. Новейшая поваренная книга. М., 1865. Ч. 3.〔復刻版〕 |
| [19] | Руководство для молодых хозяек. Новейшая поваренная книга / сост. Найденов. М., 1865. |
| [20] | Макарова А. Русская поваренная книга. По изд. 1880 г. М., 2016. |
| [21] | Авдеева Е.А. Карманная поваренная книга. СПб., 1846. |
| [22] |
Макаревич А. Немного о борще // Дилетант. 2016. 4. С. 70−71. |
| [23] |
Авдеева Е.А. Ручная книга русской опытной хозяйки. Ч. 1. СПб., 1848. |
| [24] | Секреты кухни. Руководство к домохозяйству, составленное из сорокалетних опытов и наблюдений доброй хозяйки русской Екатерины Авдеевой. Ч. 1−3. СПб., 1877.〔復刻版〕 |
| [25] | Полная поваренная книга русской опытной хозяйки, или руководство к уменьшению расходов в домашнем хозяйстве. Сочинение Екатерины Алексеевны Авдеевой. СПб., 1875. |
| [26] | Авдеева Е.А., Маслов Н.Н. Поваренная книга русской опытной хозяйки. Руководство к уменьшению расходов в домашнем хозяйстве. СПб., 1912.〔復刻版〕 |
| [27] | 荻野恭子『ロシアのスープ』(東洋書店、2014年)。 |
| [28] | 『おそうざいふう外国料理 暮しの手帖版』(暮しの手帖社、2007年)。 |
| [29] | 『ヨーロッパのスープ料理 フランス、イタリア、ロシア、ドイツ、スペインなど11カ国130品』(誠文堂新光社、2012年)。 |
| [30] | 平野顕子、イーゴ・キャプション『キャプション家に伝わる日々のごはん ウクライナの家庭料理』(PARCO出版、2022年)。 |
| [31] | WAREHOUSE『UKRAINIAN FOOD HOUSE x KOMORAのウクライナご飯』(2022年)。〔Kindle 電子書籍〕 |
| [32] | Новейший русский опытный практический повар, эконом и кондитер, совершеннейший мастер своего дела для городских и сельских жителей. Ч. 1−5. М., 1844.〔復刻版〕 |
| [33] | Толиверова А.Н. Поваренная книга для молодых хозяек. Скоромный и постный домашний стол. СПб., 1885.〔復刻版〕 |
| [34] | Павловская О. Скоромный и постный стол. СПб., 1876. |
| [35] | Радецкий И.М. Альманах гастрономов. Кн. 3. СПб., 1855. 〔復刻版〕 |
| [36] | Радецкий И.М. Альманах гастрономов. Кн. 1. СПб., 1852.〔復刻版〕 |
| [37] | Радецкий И.М. Санкт-Петербургская кухня. СПб., 1862.〔復刻版〕 |
| [38] | Завадзкая В. Литовская кухарка. Вильна, 1885.〔復刻版〕 |
| [39] | Молоховец Е.И. Подарок молодым хозяйкам, или средства к уменьшению расходов в домашнем хозяйстве. Курск, 1861.〔下線部 а=中性名詞複数形〕 |
| [40] | Молоховец Е.И. Подарок молодым хозяйкам, или средство к уменьшению расходов в домашнем хозяйстве. Петроград, 1917.〔下線部 о=中性名詞単数形〕 |
| [41] | Сюткина О.А., Сюткин П.П. Непридуманная история русской кухни. М., 2011. |
| [42] | Александрова-Игнатьева П.П. Практические основы кулинарного искусства. Руководство для кулинарных школ и для самообучения. СПб., 1914. |
| [43] | Goldstein D. The Kingdom of Rye. A Brief History of Russian Food. Oakland, 2022. |
| [44] | 奥田和子『なぜ食べるのか 聖書と食』(日本キリスト教団出版局、2002年)。 |
| [45] | 『旧約新約聖書大事典』(教文館、1989年)。 | [46] | Друковцев [Друковцов] С.В. Экономическое наставление дворянам, крестьянам, поварам и поварихам. СПб., 1773. |
| [47] |
Русский биографический словарь. Т. 1. СПб., 1896.〔復刻版〕 |
| [48] |
Пивоварение и квасоварение. М., 2017.〔書き換え版〕 |
| [49] | 奥山益朗『味覚辞典 ―西洋料理―』(東京堂出版、1974年)。 |
